大人になったからなのか、最近の流行なのか、水を好む人が多いように思う。ウォーターサーバーの宣伝を目にする機会も増えたし、スギ薬局や無印良品なんかでも、給水サービスを行なっている。美容系の記事では、一日に水を2リットル飲むと肌が綺麗になると謳ったりして、水を積極的に飲む人が多いのだなと感じる。


 私はどちらかと言えば、長年お茶を好んでいる。昔から我が家で水といえば水道水だったので、どことなくツンとした匂いがして、加熱されて作るお茶の方が美味しく感じられた。不思議なのは、祖母の家の水道水と、私の家の水道水は味が違うと感じていた。どちらかと言うと、私の家の水道水の方が苦手だったのだが、同じ水道を引いているはずなのに何故そんなふうに感じたのか、今も不思議である。とにかく、水は生っぽさを感じるので、ずっと苦手にしていた。


 2,3年前、実家がキッチンをリフォームすることになった。さまざまなオプションを検討する中で、母が欲しがったのは浄水器だった。水道水の蛇口とは別に、濾過した水が出るよう設置するのだ。父は特に欲しがるそぶりを見せず、私も我が家はずっとお茶派だったので、いらないのではないかと提言した。


 ところが、母の希望が通り、浄水器がついた結果、最も喜んで使うのは父であった。お酒の水割りを作るのに、浄水器は大変便利だと言うのだ。ウィスキーの水割りを作れるようになったと喜び、父の晩酌のラインナップにウィスキーボトルが仲間入りした。母も美味しく感じると喜び、浄水器は導入して良かったと大満足の結果となった。しかし、私はといえば、水道水よりは美味しいくらいの感想しか持たず、依然お茶を好んで飲んだ。


 そんな私が、ここ最近は水ばかりを飲んでいる。家のキッチンに浄水器はないのだが、去年浄水ポットを買ったので、濾過した水が飲める。その浄水ポットは、水が飲みたくて買ったのではなく、水出しのお茶を作りたくて買ったものだった。しかし、今やお茶を作りさえせず、水を飲んでいる。


 何故こんな変化が起きたのかは、私にもわからない。お茶が嫌になったわけではないのだが、水でも良くなったのである。そして、水は浄水ポットに入れれば良いだけなので、お茶をつくる手間が省けると圧倒的に楽になって、本当にお茶を飲まなくなった。


 水はどうも、苦手だなと思っていた私に、こんな日が来るとは思ってもみなかったが、どうやら私も大人になったということなのだろうか。

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