許嫁との出会い

65_もう一人の幼馴染

今日は、本田、照葉(てるは)が遊びに来た。

いや、学年1位のさくらに勉強のしかたを習いに来たのだ。


俺も聞いたが、さくらの頭が良すぎて参考にならないと思うけど・・・

常人には真似ができない勉強法だった。


とりあえず、みんなリビングの床に座って、ローテーブルでさくらのノートを見せてもらうことになった。

俺も一応、参加しておこう・・・


みんながバタバタ準備している間に、さくらは全員分の飲み物を準備してくれた。

優秀すぎる。

『表モード』全開だ。




「あ、さくら、俺のカバン知らない?」


「部屋にありましたよ?」


「ああ、そうか。さっきプリント出した時のままだ」


「「(・・・ん?)」」




「あ、俺の赤いペン知らない?」


「セリカくんが好きな顔料のやつですか?」


「そうそう!」


「珍しく机のペン立てにささってましたよ?」


「ああ!昨日か!無意識にさしたんだ!」


「「(・・・んん?)」」」




「あ、あれどこかな?」


「リビングのローテーブルの上に置いてありましたよ」


「えー、うそ。あ!あった!ありがと」


「「(・・・んんん!?)」」




「・・・なあ、お前らの、その夫婦感なんなの!?」


本田が前のめりで訊いてきた。


「なんだよ『夫婦感』って」


俺は、リビングでコーヒーを飲みながら答えた。


「ここ、セリカくんのお家だよね!?なんで堀園(ほりぞの)さんがキッチンのものの場所とか知ってるの!?」


しまった。

一応、一緒に住んでいることは内緒だった。


「んーと・・・」


「私、許嫁ですから」


さくらが助け舟を出してくれた。


「なんだよ、その飛んでも科学は~。許嫁超能力かよ」


また本田が訳の分からないことを言い始めた。


「私は幼馴染だけど、どこに何があるとか分からないです!」


「そうですか。小鳥遊(たかなし)さんはセリカくんの幼馴染になるんですね」


さくらの表情が読めない。

『裏モード』出現か!?


「そうです。私はセリカくんの幼馴染ですから(ドヤァ)」


照葉(てるは)の華麗などや顔が決まった。


「出会ってどれくらいの期間でしょうか?」


「小学生の時。10歳くらいの時からだから・・・もう、6年くらい?」


照葉(てるは)の口の調子がいい。


「うわぁ、歴史がなげぇだよ・・・大丈夫か!?俺」


本田がごそごそ言っている。


「そういう意味では、私もセリカくんの幼馴染と言うことになりますね」


「えー!?どういう事!?」


照葉(てるは)がいち早く反応した。


「私は、10歳までセリカくんと一緒でしたし。10年間のお付き合いです」


「それ生まれてから、ずっとってことかよ!?堀園(ほりぞの)さんすげえなぁ」


本田が素で感心していた。


「わーん!うそー!私の唯一のアイデンティティが!!」


その場に打ち崩れる照葉(てるは)。


ちょっと待て。

俺は、そんな話知らないんだけど。

さくらが、照葉(てるは)を揶揄(からか)っているのか?

そんなことする子じゃないよなぁ・・・


俺の疑問が解決しないうちに、本田が質問を重ねる。


「じゃあ、セリカの事は何でも知ってる、と」


「もちろん、知らないこともありますよ?」


「例えば?」


照葉(てるは)が若干涙目で質問した。


「離れていた約6年の間の事とか・・・」


さくらの表情が少し寂しそうになった。

それも一瞬で、普通に続けた。


「あとは、引出しの中の宝箱の中身とか・・・でしょうか」


「宝箱!?」


俺は、それも知らないぞ!?

さくらは、俺の知らないものをどれだけ知っているのか・・・


「机の一番下の引出しの一番奥に詰め込んである・・・」


「いや、そんなものない!俺は知らない!」


「マジか!?面白そうじゃん!見に行こうぜ!」


「ちょ、待てよ!」


本田は、俺が止めるのも聞かずに俺の部屋に向かった。

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