63_美少女とデートとチョーカー

次に、今日のメインイベントともいえるファッション雑貨のお店に入った。

大型ショッピングモールなので、色々な店があるのだが、高校生でも買える価格帯の商品を置いていて、センスが良さそうなお店をさくらがチョイスした。


目的がなく店を見て回るのは俺には苦痛になりそうだったが、『チョーカーを探す』と言うミッションがあると楽しめた。


そんなに高価な物じゃないらしいし、本当は、さくらは自分でも買えるのだろう。

もしかしたら、俺が楽しめるように、わざとミッションを設定してくれたのかもしれない。


そんなことを考えつつ、さくらが欲しいという『チョーカー』を探しに行った。

見てみると、リボンみたいなヒラヒラしたヤツから、革のベルトみたいなのまで色々ある。


女の子の手首に付けるには、若干輪っかの大きさが大きいので、ひねって2重とかにして身に着けるものだろうか?


価格を見たら、高くても2,000円程度だったので、デザイン的に好きなのを選んでもらうことにした。


しばらくあれでもない、これでもないと迷っていた。

美少女が迷い、選んでいる様は見ていて微笑ましい。


時々笑ったり、時々難しい顔をしたり、2つを持ってきてどちらがいいか聞いてきたり。

恐らく何時間でも付き合えたし、その時間も楽しかった。


恐らく、俺は自分で思っている以上にさくらのことが好きなのだろう。


「できれば、学校にも身に着けていけるシンプルなものがいいのですが・・・」


「アクセサリーのように華美なものは、学校に付けて行ったらダメなんじゃないか?」


「確かに、石やシルバーが付いているような物はダメかもしれません。でも、シンプルな物だったら、大丈夫なはずです」


「そうか、じゃあ、これなんかどうだろう」


黒くて細めのもので、チェーンが少しだけ付いていて、それで取り外しができるようになっているみたいだ。


「それです!それが良いです!」


今日一番のキラキラした目で言われたので、即決した。

俺はアクセサリーの可愛さは分からないが、さくらが気に入ったのならば全く問題ない。


会計を終え、プレゼント用に包装してもらったものを、さくらに手渡す。


「帰ったら、早速つけてみたいのですが、セリカくん付けてくれますか?」


さくらが、左の手首を出して、右手で止める仕草をした。

そうか、金具が小さいので片手だと難しいのか。


「ああ、いいよ」


「セリカくん大好き!」


人前だというのに、さくらが抱き着いてきた。

そう言うの照れるからやめろよぉ(棒読み)


■帰宅後

結果から言うと、俺は完全にさくらの策略にハマっていた。

面白いほどにドンギマリでハマっていた。


家に帰ると、さくらが迷わずチョーカーの包装を開けた。

そんなに高価なものでもないのに、そんなに喜んでもらえるのは俺としても嬉しかった。


さくらはチョーカーを取り出すと、少し持ち上げて、色々な角度で眺めたりしてすごく楽しそうだった。

その笑顔は、花のようだったが、段々だらしない笑顔に変わっていった。



「あれ?」


さくらが、チョーカーのチェーンを外して俺のところに持ってきた。


「セリカくん、すいません、付けてもらっていいですか?」


「ああ、いいよ。手を出して。右手?左手?」


さくらが少しニヤリとしたような気がした。


「セリカくん、チョーカーは腕にはめるものではありませんよ?」


そう言うと、背中を向けて俺の前に座って、髪をかき上げた。


「チョーカーは首に付けるものです」


やられた!

こいつ、『首輪はダメ』と言われたから、名前が違う別のものを選んできた!


しかも、ご丁寧に『家に帰ったら付けてあげる』と約束までしてしまっていた。


「(はあ、はあ、はあ、はあ)セリカくん・・・お願いします」


「負けたよ・・・」


そっとチョーカーをさくらの首に巻き、後ろでチェーンを留めた。

留めている時、さくらのうなじにドキドキしたのは秘密だ。


(カチャ)「ほい、付けたよ」


「あっ・・・(ビク、ビクッ)」


さくらがチョーカーを付けられて座ったまま仰け反った。


「お前、今イッただろ!イッたよな!?」


「(はあ、はあ、はあ、はあ・・・)誤解です・・・」


さくらが恍惚の表情で、床に手をついて息も絶え絶えに答えた。

こいつは・・・


ちょっと変態なんだけど、それもまた可愛んだよなぁ。

俺も、さくらじゃないとダメになってる。

もう、引き返せないところまで来ていることを実感した。

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