10_美少女の告白

漸(ようや)く話が聞ける状態になった。

昼頃に突然彼女がうちに来て、『許嫁です』と衝撃的なことを告げてきた。


正直、俺としては見たこともないような可愛い子だったので、いたずらかと思う程だった。

流れ流され、もう夜になってしまったが、ここはしっかり聞いておきたい。


ソファに座った彼女はくりくりとした目で、俺を見つめている。

それだけで、違うことに意識を取られそうだが、ここは強い意志で言った。


「俺は、『許嫁』のことなんて、悪いけど、聞いてなくて・・・」


そもそも俺は一般家庭の子なので、許嫁なんて仰々しいものがいるはずもないのだ。


「セリカくんとは小さい時、結婚の約束をして・・・昔のことだから、覚えていないかもしれませんね・・・私ったら、嬉しくってずっと覚えていて・・・」


うーん、絶妙に否定しにくい感じ!

小さい時って、まだ小学校低学年とかの時の話だ。

全然覚えてない。


「小さい時・・・とはいえ、結婚の約束をしたってことは『婚約』じゃないかな?どうして『許嫁』?」


「それは、お父様に許可をいただいたからで・・・」


あの親父ぃぃぃ!!

たまにしかメールをよこさないと思ったら!

一回膝を交えて話をする必要があるな!


堀園さんはクッションを指で弄びながら話し始めた。


「おばあちゃ・・・祖母が亡くなって、一人になって・・・私って一人なんだなって・・・どこかに一人でも、私のことを必要としてくれる人がいたら・・・って」


たった一人の肉親が亡くなったみたいだから、心細くなったのかな。

多分、身近な肉親が亡くなることは誰でも経験することだろう。

きっと俺だって。


ただ、彼女はまだそれを受け止めるには若すぎるのかもしれない。

俺だって、父さんが死ぬなんて考えてないしな。


「今日・・・セリカくんに何年かぶりに会えて・・・身の回りのお世話をさせてもらって・・・心の底から幸せを感じました」


俺の散らかった部屋と溜まった洗濯物にそんな効果が・・・(汗)


「作ったご飯もバクバクおいしそうに食べてくれて・・・お腹の下の方からキュンキュンしました」


ああ、あのカレーはうまかった。


「あんなにおいしそうに食べてもらえるなら、食べられたい!あ、いえ、私の料理を食べていただきたい!と思いました」


ん?今言い間違えた?

なんか変な感じだった?


まあ、日々コンビニ弁当の生活だったので、手料理が食べられたのは俺としても嬉しかった。

しかも、びっくりするくらいの美少女の作るカレーとなると、最強だろ。

一生忘れないかもしれないくらい強烈なインパクトがあった。


出来ることなら、ずっとこの環境でいたい。

でも、現実的にはそうはいかないだろうなぁ。


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