04_美少女の目的

色々聞きたいことはあった。


― 許嫁ってなんだ。

― なぜ突然きたのか。

― そもそも誰なのか。


聞きたいことを聞きにくい。

俺ってコミュ障だったのだろうか。


何となく聞いてはいけないような気がするのだ。

聞きたい。

でも聞きにくい。

そんなせめぎあいを一人していた。


彼女が淹れてくれたおいしいコーヒーを飲み終わった頃、口を開いたのは彼女が先だった。


「あの・・・セリカくん」


「なに?」


「お夕飯のお買い物に行きたいんだけど、お店が分からないから、良かったら・・・その・・教えてくれないかな・・・」


どうも彼女は夕飯まで作ってくれるつもりらしい。

やっぱり泊まっていきたいってこと?


なんか、援助交際のおっさんの気分になってきた・・・


「今日、泊っていく?」


服でも着替えようかと思って、立ち上がった僕が聞くと、彼女はピタリと動きを止めた。

また、絶望を体現したような顔をしている・・・


「その・・・セリカくんと・・・一緒に暮らしたい・・・です」


なんかすごいことを言った!?


美少女が突然、家にやってきて、掃除をしてくれて、料理を作ってくれて、一緒に住むことになる!?

そんなエロ漫画みたいなことが平然と起こる世の中にいつ変わった!?

どこから世界線が変わったってんだ!?


ここは異世界だろうか。

いつのまにか!?


「ダメ・・・ですか?」


また彼女の祈るような仕草。

そして、美少女の上目遣いは童貞を殺すには十分すぎた。


「いいけど・・・」


「ほんとですか!?」


地獄から一気に天国というような天使の笑顔で喜んでくれた。

え?なんかあるの?

この家に泊まらないと死ぬみたいな謎のゲームが。


「着替えてくるからちょっと待ってて」


そんなことを言いながら、俺は部屋に戻って部屋着から外に出ても恥ずかしくない服に着替えた。

着替えながら思ったことは、俺は彼女の名前すらまだちゃんと覚えていないこと。


堀園さん、堀・・・園・・・さん。

そう言えば、小さい時近所にそんな名前の家があったかもしれない。

近所に子供もいっぱいいたから、その中にいたかも。


下の名前は・・・さくらさんとか言ったな。

そこまでは覚えてない。

あんなにかわいい子だったら、昔からかわいいはず。

俺が覚えていないってことはないと思うんだけど・・・

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