モンスターの大行進
帰宅後楽しくパーティーをしました。
みんな疲れてしまったのか、少し早い時間に寝付き我が家は消灯してしまいました。
僕は寝たフリを辞め、ベットから抜け出します。
「行くか」
「ハルトどうしたの?」
寝ていたはずのお母さんを起こしてしまったようです。
「起こしてごめんね。ちょっとトイレ」
妹はまだ一歳なので、ちょこちょこ夜泣きをしてしまいます。
ですので夜深く眠れない事が多く困っており、お昼寝している場合はテレパシーで対話しできるだけ寝かすようにしています。
僕は部屋を出て、トイレには行かず魔法で自分そっくりのコピーを作ります。
「お留守番頼むな」
「ラジャー!」
コピーがスタスタと歩き、ベットに入るのを確認した所で体が冷えないように、少し暖かい格好をします。
僕の体を透明に変える魔法と、音や匂いを消し存在を限りなくゼロにする魔法を使います。
これで絶対に一般人にはバレません。
「行ってきます」
ゆっくりと家のドアを閉め、鍵をかけ今世では初めての夜を体験します。
「夜なのに明るい」
前世では電気などなく、魔石で灯りをつけていました。
ですが魔石は価値が高く、長い間使える魔石はかなりのお値段がします。
そのために夜が深くなる前に、店を閉め眠りにつくのが一般的です。
これは街の場合で、田舎の村などでは魔石を使えるほどのお金が無く、火を起こして生活します。
なので夜どこに行っても明るかったり、お店が一日中空いていたりと化学の力は凄いです。
でもそのせいで空を見上げても、星があまり見えません。
よく星を眺めて夜を過ごしていた僕としては少々寂しいです。
家の屋根を走りながら色々な感情浸っていると、目的地に着きました。
深夜に家を飛び出してまで来た場所は、先程親子の犬と出会った公園です。
一応辺りを見渡してみましたが、公園には犬の親子はいませんでした。
「早くしないと」
嫌な予感がずっとしており、急いで犬の親子の魔力を追いかけ公園裏の山へ駆けます。
あの犬の親子と出会った時、嫌な気配を感じていました。
いえ、嫌な魔力を感じていたのです。
親犬の聖なる魔力の周りに、複数の邪な魔力がこびりついていました。
おそらく親犬は、洗脳または自分の意識を保つので精一杯だったはずです。
その状態で子犬為に周りを威嚇し、頑張っていたので僕は邪の魔力に効く浄化魔法をエンチャントし回復させ続けていたのです。
ですが浄化されることは無く、段々と聖なる力が弱まり現在進行形で侵略されています。
GYAAAAAAAAAAA!!!
多くの種類のモンスター達が大きな声を上げ、走っている音が聞こえました。
モンスターは普通の場合、違う種類と団体行動しません。
ですがモンスター達の魔力は列を作り、二匹の魔力をずっと追いかけ回しています。
そしてその二匹魔力は見覚えがあり、一つは聖と邪の魔力が混じった魔力。
もう一つは、小さい子供の聖なる魔力です。
「見つけた!」
僕の体は、身体強化を全力でかけるにはまだ成長しきっていません。
その為、体がギリギリ耐えれるくらいまでの身体強化をします。
すると全身が千切れるような痛みに襲われました。
ですが痛みを無視して走ります。
かなりの距離があり、持続的な痛みに弱音を吐きそうになります。
前世の力であれば一秒足らずで着いていたはずなのに。
今ほど百パーセントの力が使えたらと、思わずにはいられません。
「あと、少しなのに。おかしい」
息切れしながら、力を振り絞り走っていますが、もう少しの所でなかなか距離が縮まりません。
「僕が遅くなってる?違う!モンスター達が速くなっているんだ!」
最初はモンスター達と距離が縮まっていたのですが段々と縮まらなくなり、ついにはモンスター達に置いていかれるようになります。
「くっそ!あと少しなのに!!」
モンスター達の最後尾が先程まで見えていたのですが、どんどん小さくなり豆粒のようになっていきます。
「もうどうにでもなれ!!」
今までは、体が壊れるギリギリまで身体強化を使っていました。
ですが覚悟を決めますり
もう体は捨てる!
「身体強化ダブル!!」
今までにかけていた身体強化を二重にかけます。
体が壊れるギリギリまで使っていたのに、更に二重にしたため体が壊れ始める。
バキっと鈍い音がして、それが一度だけでは無く何度も何度も鳴り響きます。
「いた、すぎる」
全身の骨が折れる音を聞き、少し力を抜くと足を止め意識を手放してしまいそうになります。
ですが魔力で無理やり骨を固め、走り続けます。
そうしないとあの親子を救えないから。
体を犠牲にして走っていてもモンスター達と距離が縮まっていきません。
更に速くなってる!
「身体強化トリプル!」
とうとう骨が粉々になり、跡形もなくなっていきます。
足の形を保っているのは魔力の力のみです。
それでも足を止めないのは、どうしても救いたいから。
自分のエゴでしかない。
だけど絶対にあの家族を守りたい!
気合いで走り続け、モンスター達の列の最後尾が見えました。
そのままの勢いで先頭まで走り抜けます。
そしてモンスター達を倒すため、かなりの魔力を込めた魔法を放ちます。
「ファイヤーアロー!」
無数の小さな炎の矢がモンスター達を刺し、燃え上がります。
「ギリギリ間に合った、君達を助けに来たよ」
モンスター達に襲われたのか、ボロボロになった犬の親子を安心させるため、回復魔法を使い頭を撫でます。
最初は警戒していた親犬ですが、回復された事により気を許し、喉を鳴らして頭を足に擦り寄せてきました。
助ける事ができて安心し、力を抜いて体を回復させる事にしました。
「ヒーr」
「お返しだよ」
回復しようとした体には、モンスター達を倒すために使ったファイヤーアローが刺さっており、壊れかけている全身と度重なる疲労で僕の体は限界を迎えて意識を手放しました。
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