本当の家族
一年後
「お母さんお腹減ったー」
「はいはい何食べたい?」
「ステーキ食べたい!」
僕は数日前一歳になりました。
昔の名残なのか、好きな食べ物は分厚いステーキです。
現在では普通に喋りご飯を食べ、走り回ってます。
普通の一歳児では、歩き始め柔らかいものを食べ、あーあーうーうーなどの
僕の場合はみんなと同じように、食事や会話をしています。
最初は演技をして、喃語を話していたのですが意思疎通がめんどくさくなり、パパやママと徐々に単語で話せるようにしました。
食事面はミルクの時は良かったのですが、生後四ヶ月頃に離乳食を始めることになりました。
離乳食初日、食べてみたのですがクソまずかったのです。
ベチョベチョで食えたものではありません。
僕はそろそろ噛みたくて、うずうずしており我慢出来ませんでした。
お母さんのミニハンバーグを鷲掴みにして、食ってやりました。
しっかりとした味があり、
前世では、国王様レベルでも食べれる味ではありません。
夢中になって食べ続け完食し、お父さんのミニハンバーグも食べようとした時、喉に詰まり息ができず死にかけます。
なかなか喉から落ちず、息が出来ないためもがき苦しみ気絶し病院に運ばれました。
あれは良い思い出です。
まさか、魔王並みに手強い相手がいるとは思いもしませんでした。
数分後、救急車の中でミニハンバーグが喉から胃袋に落ち、気道確保し意識を取り戻した僕は美味しかった!と言って驚かしお母さんを泣かせてしまいました。
その日から、しっかりとご飯を噛むように心がけました。
「ただいま」
ガチャりと音を立て、疲れた顔で家に帰ってきたのはお兄ちゃんです。
お兄ちゃんは、いつも通り手を洗いそのまま自分の部屋に入り、ご飯まで部屋から出てきませんでした。
お兄ちゃんは家族とあまり仲良くありません。
僕が生まれて少しした時、親戚が亡くなり引き取ってきた子供なのです。
幸いな事にお父さんは会社でそこそこ偉い立場らしく、お金は困ってないので引き取ると言いました。ですがお母さんが僕が産まれたばかりなのに無理。などと言い合いしていたのを聞き、遠慮し距離をとっているのです。
いつになったら、皆で仲良くできるのでしょうか。
お兄ちゃんが帰ってきて二時間後、お父さんも帰ってきました。
皆で食卓を囲み、レモンでさっぱりとしたチキンステーキを食べました。
とてもおいしかったです!
さらに二年後
「ただいま!二人とも元気にしてかい!」
この元気な人は、高校から帰ってきたお兄ちゃんです。
三年生になって部活も終り、最近は早く帰り趣味のカメラを持ち、僕達の事を追い回しています。
それだけでは飽き足らず、撮影した動画をネットに投稿し可愛い可愛いと全世界に拡散しています。
どれだけ好きなのか。本当に兄バカですね。
「あーあーうーうー」
そんな兄は、僕が産まれた時に使っていたベットにカメラを持ってしがみついています。
いつの間にカメラを出したのでしょうか。
そのカメラの先、ベットの中央には小さな赤ちゃんが眠っています。
やはり幼女趣味に目覚めて連れ去ってきたですって?
なんと失礼な!
僕達線崎家に新しく妹ができたのです!
去年の夏、お腹が大きくなり妊娠三十周になったくらいでしょうか。
お母さんが久しぶりにと張り切って、大量の唐揚げを作っていました。
揚げ終わった唐揚げをバットに移し、油から離れていました。
お兄ちゃんが帰って制服のまま、冷蔵庫の麦茶ボトルを取り出し移動した時です。少し長い制服に鍋が引っかかり、鍋ごと熱せられた油が落ちてしまったのです。
それを見たお母さんが、お兄ちゃんを助ける為に間に入り
その瞬間僕は、身体強化を使い全力で二人の元に行き、突き飛ばし油を頭から被りました。
油を被った僕を見てお母さんは急いで救急車を呼びます。
電話の途中お母さんは、お腹を抱え倒れ破水してしまいます。
お兄ちゃんが繋がったままの電話で現在の状況を説明し、もう一台救急車を呼び母と僕は病院へ行きます。
お母さんはそのまま無事妹を出産しました。
妊娠三十週早産です。
その裏で僕は救急車で運ばれる前、火が油に燃え移ったのを見て空気を無くして消火し家事にならないよう、燃える性質を燃えない性質へ性質変化しておきました。
その後魔法で火傷を程々に治して、気絶した振りをします。
お医者さんからの診察を終え、油が低温だったのでしょうと言われ、普通に塗り薬を貰い分娩室の前でソワソワと待機し、産まれた瞬間お母さんと妹に回復魔法を使いました。
お母さんは出産後落ち着いたら気絶するように寝てしまい、話すことができず仕事を切り上げて来たお父さんと一緒に、僕達は帰宅しました。
帰宅後お兄ちゃんは、我慢していた涙が溢れ何度もお父さんと僕に謝っていた。
お父さんは、泣き止むまで何度も
そのまま地面に広がった油に小麦粉をかけ、後処理をしながら僕に話しを聞いてきます。
「そうだったのか。一緒にいれなくてごめんな。三人を助けてくれてありがとう」
僕は、お父さんの言葉を聞き凄くかっこよく見え、こんな大人になろうと決意します。
そして良い父親に恵まれたと女神に感謝しました。
翌日、仕事と学校を休み三人で病院に行きました。
お兄ちゃんは、病院が近くになるにつれて涙目になっていき病室に泣きながら入って行きます。
「二人とも怪我は大丈夫?」
お母さんの一言目は僕だけに向けたものでは無く、二人に向けての言葉でした。
お兄ちゃんは、お母さんに近寄って床に座り込み何度もごめんごめんと謝ります。
「ハルトの事はお医者さんに教えて貰ってたから安心していたけど、貴方の事は何もわからなかったから心配したのよ」
「俺・・・俺のせいで母さんが」
「私はいいの。貴方達が無事ならそれで。私ね、貴方を引き取る時とても酷い事を言ったの。ハルトが産まれたばりなのに育てるのは無理よ。施設に預けましょうって。そのせいでいつも遠慮していたのよね。一緒に暮らして分かったのよ。貴方はとてもいい子だった。それなのに、なんて酷い事を言ったのだろうって。そんなことを言った私は、ずっと貴方の事を家族として愛せていないんじゃないかって思ったの。でもあの時貴方が危ないってなった時、
お兄ちゃんは、ごめんじゃなくてありがとうと変わり辛そうな顔じゃなく、嬉しそうな顔でお母さんに抱きつきます。
お母さんは、お兄ちゃんを優しく抱きしめて何度も頭を撫でました。この日お兄ちゃんは、本当の意味で家族になりました。
僕は、綺麗な家族愛だなと思い皆に何があっても絶対に守ろうと全てにかけて誓いました。
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