第21話 会ってほしい人

鈴原カイト《すずはらかいと》からの連絡を受け、会ってほしい人が今日なら時間が取れると言う。

俺はカイトと《その人》に会う約束をした。


約束の時間はPM20時。

ーーどんな人なんだろう?そんな事を漠然と考えながら、俺の胸で何かが訴えている。

漠然と、良くない事が起こりそうな気がした。


待ち合わせの場所に二人が来ると、俺は目を疑った。


ーーまさか、、。

ーー何でここに??

ーーたまたまここで飲もうとしてただけか?

ーーいや、違う。この感じは、、。


漠然と心の中に疑問符ばかりが浮かぶ。


二人は手を繋いでいる。

それも指を絡め、いわゆる恋人繋ぎで突っ立っている。


俺は現実が受け止められずに座ったまま、声もかけずにその姿を見つめていた。


「ーーどう、、して??」


俺は蚊の鳴くような小さな声でぼやいた。


「どうも!山崎拓海くん、、」


そこに立っていたのは、あの時の笠原佐知子の姿だった。


「ーー俺たち、結婚を前提として付き合ってるんだ」


ーーは?

ーー何を言ってるんだ?この男は、、?


待て待て。

俺はこんなもんを見せられる為に、呼ばれたのか?

待て待て待て。

ただの嫌がらせじゃねーか、こんなの。


「帰る」


俺はすぐさま、席を立つ。

これ以上、俺はここにはいられなかった。この空間はもう耐えられない。

俺はそのまま店を出た。



店を出て暗がりの方へ向かって走っていく。

後ろからカイトが追いかけてくる。


ーーあの時の言葉は何だったんだ?

ーー俺が人生初のプロポーズをした時。男と付き合う気はない、、。結婚を前提にして付き合っているのに??

だったら、心に決めた人がいる。

そうハッキリと言ってくれた方が諦めも着くってもんだ。

それなのに、、最低だ。


小さな石ころを蹴っ飛ばす。


「ふっざけんなー」


これでもか、ってくらいに大きな声で叫んだ。


「ーー何を叫んでんだよ!拓海、、」


カイトの声がした。俺は思わず、カイトの胸ぐらをつかんだ。


ーー知ってたのか。俺が彼女の事を好きだってこと。


「あぁ、彼女から聞いたよ。ーーお前、プロポーズしたんだって??しかも突然、、。とんだお笑い草だぜ。俺と佐知子はもう結婚式の日取りまで決まってるんだ。呼んでやるからな、、」


ーーそんなとこ、行くもんか。


「ーーお前、、謀ったな」


カイトの胸ぐらをつかんだまま、俺は言った。


「そーだ。だって、俺はお前のせーですごく痛い思いをしたんだ。一歩間違えば死んでてもおかしくなかったんだーーそれなのにお前は無傷なんておかしいだろ??だから、、」


「許すって言ってたのは、嘘だったのか?」


「当たり前だよ!拓海、、何で俺が、お前を許さないといけないんだ。金なんかで、納得できるかよ!」


ついにカイトの本性を知った気がした。

思わずカーッとなってしまった。

もう止めようがない。


ーーふっざけんな!人の事をバカにしやがって!!


胸ぐらをつかんでいた手に力が入る。

俺は思わず彼を突飛ばし、足元に転がっていた大きな石で、カイトの頭を殴り付けた。

彼は赤い血を出して倒れた。

生きているのか、死んでいるのか?わからないが、、彼はまったく動かなくなった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る