第12話 喧嘩

夕暮れに染まっていく街を、ただ歩いていた。

この街には、ガラの悪いヤツが多い。

特に関わりがあるわけでもないが、一昔前のチンピラ風の輩が、しょっちゅう喧嘩している。

俺も喧嘩は良くした方だし、それが悪いとも思わない。

だが、彼らは俺のケンカと少し違っている。


ーーケンカだ。


男は大声で騒いでいた。


ーーまたか。


この街ではよくある光景だ。この街の住人なら、そんな事はさほど気にしない。

せいぜい、ため息を一つつくくらいだ。

大声で騒いでいるあの男は、おそらくこの街の住人ではないのだろう。


「ーーおい、ケンカなんて辞めろ」


普段なら放っておく所だろうが、この日、拓海は珍しくそれを咎めようとした。

それは拓海の中の滅多に顔を出さない正義感だ。


胸ぐらを掴みあっている二人の顔を見る。


「ーー何があったんだ?」


二人の手を抑えながら、拓海は聞いた。

何も言わない。だが、その目は狂気に満ちていた。

睨み合ったまま、二人は未だに胸ぐらを掴んだままーー。


「いい加減にしろよ!お前ら!!」


これでもかって位の大きな声で、拓海はそれを咎める。


「ーー何なんだよ!関係ないヤツが、クビ突っ込んでくんじゃねーよ!」


背の高い方の男が振り回した拳が、拓海の頬をかすめた。


ーーってーな!


拓海はその男の胸ぐらを掴んだ。

もう自分を止める事は出来なかった。


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