第8話 回想

あれは、もう10数年前の事だろうか。

あの時俺はまだ若かった。

黒い学生服に身を包み、まだ中学生として、勉強と部活が、一日のルーティーンの大半を占めていた。


学校での生活はそこそこ楽しいものだった。

家に帰るまでは、、。


「ただいま」


声を落として玄関の入り口に立つと、そこからは地獄だった。


「おかえりなさい」


目が笑っていない母。

常に飲んだくれている母。

仕事もしない母。

ダメな大人の見本が目の前にあった。

そして酔っぱらうと母は、何のきっかけもなく凶暴になる。


母が酒を口に流し込む度、俺は恐怖を感じた。

いつ、どこで切り替わるのか。

怯えているうちに、眠ってしまう。

そんな暮らしが続いていた。


ある時、眠っている俺の横で、母の怒鳴り声が聞こえてきた。


「何、寝てんだ!?起きろ」


母のそんな怒鳴り声で起きて時計を見ると、

真夜中の2時を回っていた。

少なくても、普通の母親なら、こんな時間には子供を起こさないだろう。


ーー俺の家は、何かおかしい、、。


子供の頃から拓海はそう思っていた。

だけど、母から暴力を受けている事など、他の誰が相手でも言える訳がない。

殴られ、蹴られ、言葉でも暴力を受ける。そんな事ばかりだ。


こんな家ーー。


俺は中学生になったのを期に、悪い仲間たちとつるむ様になった。

あんなおかしい人が母だとは認めたくない。


こんな世の中間違っている、そう思える事ばかりだ。


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