空木博光の報われない私欲協定

もちこ

第1話 始まり


御代田 明花


明日海南高校2年6組出席番号23番

席は5列目の前から5番目


容姿はピンク寄りのベージュ色の少しカールがかったふわふわのロングヘアーに、少し幼く見える可愛らしい顔立ち。

肌は白く、きめ細やか。

背丈は低めで体型は細くも太くもなく中間くらい。

見た目はおしとやかでお人形さんぽく見えるが、時折見せる悪戯っぽく笑う姿やキャハハと笑う高めの声、友人と喋るいつもの仕草はお人形さんというよりかはどこにでもいる普通の女子高生そのものだ。


そんな彼女は多分、いや間違いなく同じクラスの天谷雅貴のことが好きなのだろう。


朝、天谷雅貴が教室に入ってくると、話しかけるわけでもなくその姿を見つめて挨拶したそうにしている。

休み時間も話しかけるということはしないが、何か話すきっかけを探しているようにも見える。

教室内でも、廊下ですれ違った時も、体育でも、放課後でも、天谷雅貴を見ている。

でも話しかけにはいかない。


御代田明花は恋愛には奥手な方らしい。

友達とはケラケラ笑って喋っているが、天谷雅貴が通ると恥ずかしそうにして通りすがった姿を目で追っている。

毎日その繰り返しで何も始まらない。


そんな奥手な彼女にも、良い機会がやって来た。


今は放課後、クラスメイトたちはほぼ帰り、教室には残り三人。

天谷雅貴と話す絶好のチャンスができた。




はずだが今日も御代田明花は何もできなかった。

天谷雅貴はいつも通り教室を後にし、所属している演劇部の部室へと向かった。

そして御代田名花もいつも通りその姿を、頬を赤らめて見つめているだけ。


今回も残念な結果で終わってしまったということだ。



「ちょっと。」


「、、、え、俺?」


「もうここの教室にはあなたと私しかいないでしょ。」


さっきまで天谷雅貴を追っていた目がこちらを向いているのに気づく。


「さっきからジロジロ見て、というかいつもジロジロ見て、」


そう言いながら御代田明花はこちらの席に近づいてきた。


「あなたもしかして、好きなの?」


「え、、あの、えっと、俺は、その、、」


確かに俺は御代田明花に好意を寄せている、だがそれを言ってどうにもならないし、もしかしたら嫌な顔だってされかねない。

御代田にとってどうでもいい人から気持ち悪い人にはなりたくはない。

できれば言い逃れしたい、どうすれば。


「天谷くんのこと。」


「、、、、、、、、え。」


「だから、あなたもその、、、あ、天谷くんのことが好きなの、、?」


「え、、いや、あの、、、え???」


この出来事が俺の、空木博光の報われない私欲協定の始まりだった。

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