第2話 [とあるイケメンの人助け]
「そうじゃん! 転生成功してるじゃないか! ッしゃ〜〜ッ!!」
あっさりと思い出したため感情が薄かったが、後から喜びがこみ上げてきた。
俺はガッツポーズを取り、喜びを噛み締めている。
「う〜ん……というか、記憶思い出しても喋り方が前世と違ってるなぁ。まあ十六年もこっちで過ごしてたら変わるか……」
まあ前世の喋り方をしていたら、こっちでは変に思われてしまうかもしれないから、ちょうど良かったな。
あと気になる点はもう一つある。
「さて、魔法いけるか? ――【
手を何もない場所にかざすと、俺の手のひらから靄が出てきて人の形を作った。それは、俺の分身だ。
【
「似てる……似すぎだな。目も黒色から金色に変わってるし……」
そう、前世の俺――クラトス・オーガストと瓜二つなのだ。
顔の形や鼻の高さ、目の大きさや変化した金色の目。転生ならば、顔が全く違ってくると思っていたのだが、全て一緒なのだ。
「……まぁ、だからなんだって話だな」
仮に俺と同じように転生した者がいたとしても、俺の顔を知っている者は数少ないからな。
知っていても、俺の師匠や一人の聖女、あとは死んだ弟子くらいだ。
ちなみにだが、俺の師匠は俺の育ての親でもある。母親や父親は生まれてすぐに死んだらしく、そこで師匠が俺を引き取ったと聞かされている。
「……
俺の記憶だと、両親は他殺。なんらかの事件に巻き込まれて殺されたらしいが、幼い頃の俺は何が何だかわからずにただただ泣いていた。
「…………。しみったれた空気はやめだやめ。せっかく記憶を思い出したんだし、少し外に出るか!」
沈みかけている気分を晴らすべく、俺は外に出ることにした。
……だが、もう隠す必要は無いな。
「【ウィンドカッター】」
風で切り刻む魔法を、自分の頭に向けて放つ。精密な動作で上手い具合に髪の毛を切り、切られた毛は地面にハラハラと落ちる。
「そんでもって、【
落ちた髪の毛が消えて無くなる。
ちなみに服はジャージだが……まあ、いっか。オシャレに気を使ったことないし、別に似合わないだろう。
「さて、早速外に出るか!」
玄関まで向かい、ドアノブを回して扉を押す。
ドアの向こう側はいつもと変わらない、平凡の世界……そのはずなのに――
「〜〜っ!」
いつもと違って見えた。世界が輝いて見える。
俺が求めていた半分は、今満たされた。最上強谷としての記憶もあるけれど、まだまだこの世界には〝未知〟が沢山あるんだ。
「よしっ、散策スタートだ!」
――この時、彼自身は気がついていなかった。記憶を取り戻す代償に、常識が少し欠けてしまっていたことに……。
###
「お〜〜。やっぱ記憶が戻ってから見ると違う風に見えてくるなぁ」
特に行くあてもなく、俺は街をぶらついている。
……けれど、なんだか周りの様子がおかしいな。さっきから視線ひしひしと感じている。
「ねぇ、あの人すっごくカッコよくない!?」
「モデルさんとか!」
「連絡先交換してもらおうよ!」
「いやいやいや! 多分顔見れないよ〜〜!」
やっぱり、髪は切らない方が良かったのか? 変なふうに目立つのはあまり好まないしな……。
散策を続けていると、風船を持って今にも泣きそうな顔をしている女の子が辺りを走り回っていた。
その女の子は人にぶつかってしまい、風船を手放す。案の定、風船は上昇し始めた。
(仕方ない……。【
少し助走をつけてジャンプし、風船をキャッチする。空中で下を見て見ると、女の子は目を見開いて俺を凝視していた。
周りもザワザワし出した。
「なっ、なんだあの跳躍力!?」
「ハイスペックイケメン……!」
「ジャージ姿でもあんなにかっこいいとは……」
下に降りたら、女の子の前でしゃがみ、風船を手渡した。
「よっと! ほら、大丈夫? 風船は取ったよ」
「ぁ、ありがと、お兄さん……」
「……一人? お母さんは近くにいる?」
「うぅん……ママ、はぐれちゃった……」
「そっか……」
結構な人混み、普通に探すのはなかなか大変そうだな。
「よければ一緒に探すよ」
「! 本当!?」
「ああ、もちろん。はい」
俺は立ち上がり、女の子に手を差し伸べる。すると小さい手で俺の手をぎゅっと握りしめる。
(さてと。れで条件は満たした。――【
今使った魔法【
これは人や魔物の数などを把握するためのただの【
今回【
(大体500メートルぐらい先か)
「それじゃ、行こっか。すぐに会えるよ」
歩幅を合わせながら魔法に引っかかった場所まで向かう。その場所に向かうにつれ、誰かが大声で叫んでいる声が聞こえてきた。
「あ! これママのこえだ!」
声の主の姿が見えると、女の子はその人の元へと駆け寄った。
「ママ!」
「! やっと見つけた! ごめんね、見失っちゃって!」
「ううん! すごいお兄さんが助けてくれたの!」
女の子がそう言うと、俺の方へ指をさしてくる。
「娘を連れてきてくれた方ですか? ありがとうございます!」
「いえ、今度からは気をつけてくださいね」
「はい! ありがとうございます!!」
俺はそれだけ言い残し、この場から立ち去った。
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