第4話
居酒屋での飲み会は盛り上がった。
特に仲村真美は、あまり飲んでいないのにベロベロに酔った人のように饒舌になり、自分の趣味であるコスメやCDについて語った。
米田翔太は、イメージ通り飲兵衛だ。
島田晴香と大崎絵美は、カクテルばかり飲んでいた。
小泉真理子はずっと烏龍茶だ。
先輩社員たちも各々楽しんでいた。
一時間を何十分か経過した頃、柴田康明は腕時計を確認した。
「ほな、俺はここでお先に失礼するな〜。皆、あまり遅くならんようにな!もし電車ありまへんってなったら、みんなでこれ使い!ほな、ほなな!お疲れさんやで〜!おっ、ちょっと前通るで、すまんな〜」
柴田康明は一万円札をテーブルに置き、しかもお会計も既に済ませていた。
「一万円あるならみんなから五百円ずつ取る必要なかったんじゃ…?って思ったでしょ」
また先輩が小泉真理子に話しかける。
ニヤリと笑って、またもや自分のことのように新入社員たちに話しだした。
「柴田部長はね、この一万円で好きなように飲みなさい、帰る電車がない人は分け合ってタクシーでも使いなさい、って意味で置いていってくれるわけ」
「でもそれなら、部長も一緒に最後まで飲んだらよくないすか?」
米田翔太は純粋な疑問を口にした。
「あの人なりの気遣いです」
柳田正志が、ハイボール片手にそれだけ言った。
「そうなの。ま、部長とか偉い人がいると話しにくいこともどうしてもあるじゃん? そういう話もできるように、自分だけ早めに帰るみたい。あと、奥さん待ってるから。愛妻家なんだよね、部長」
「へぇー…、なんか、かっこいいっすね、部長」
柴田康明は、家の最寄駅のひとつ手前で降りて、自宅までの帰路を辿っている。
もう5月になろうとしているのに少し肌寒く感じる。日によって変わる気候は、案外嫌いじゃない。
新入社員たちは素直で頑張り屋さんだと感じた。
先輩社員たちも、去年の今頃はああだったと懐古して、それにしては柳田正志は変わらない姿勢だ。と、上司っぽいことを考えていた。
今日の夜風は気持ちが良い。
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