第124話心の試練
暗い、ただ暗いだけの道を歩き始めて数分。
ただただ歩くだけと言う作業はここまで退屈なのかとエルピスが思い始めた頃に、目の前が急に光に包まれ、開いた部屋に出る。
その部屋に有ったのは木で作られた椅子と机のみで、転生前の時のことをエルピスはふと思い出す。
その時と同じ様に椅子に座ると、辺りは再び黒く染まり自分の手すら見えない暗闇の中で何処からか声が聞こえてくる。
『汝はなんなりや』
重低音の声が響き渡り、エルピスは試練の開始を自覚した。
それと同時に答えを持たない質問をされ、少しの間頭を回転させる。
だが出て来た答えは前々から自分の中にあったものだ。
「神の称号を持つ神人にして英雄と破龍の間に産まれた半人半龍ですね」
『……汝の生きる意味はなんなりや」
「俺が守りたいと思った人全員を守って、ついでに楽しく生きていくことです」
『汝の強さの源はなんなりや』
「前の前の人生の自分と手取り足取り教えてくれた師匠達ですかね」
『汝は創生神か?』
「ええ、そうです」
この日、エルピスは初めて自らの意思で創生神であることを認めた。
神にとっては自らの認識が最も大切であり、もちろんそれは創生神も例外ではない。
エルピスが問いに対して答えると暗転していた空間が再び光り輝き、目の前に人影が現れる。
それには実態がなく文字通り人影でしかなく、顔がないので表情はないが雰囲気からして待ちわびていた、というところだろうか。
「遅かったじゃないかエルピス」
「貴方が早いんですよ創生神様」
神だからこそ、目の前の影がなんなのか、言われずとも察することは可能だ。
エルピスがそう言ったと同時に笑い声を上げ、創生神は楽しそうな仕草をしながらエルピスが使っている机に腰をかける。
そして見下ろすように、見下すようにして目線を下に向けながら無い口で言葉を発する。
「よく分かったな、自分のことだが怠けてないか、心配だったんだ」
「そりゃ分かりますよ、ここに来たのは一度目じゃないですからね」
「物覚えがいいな。俺はそういうのは苦手だが、上手くやれている」
「貴方がくれたこの力のおかげですよ。いまある何もかもが全てね」
まるで鏡に映る自分と話しているような感覚だ。
左右反対になるだけで、約八割程度は反射する鏡の中の自分、だがその自分はやはり残り二割の部分で決定的な違いがあり、若干ではあるがズレもある。
エルピスがいまこの世界で無事に暮らせているのは間違いなく創生神のおかげであり、そうでなければ今頃は遥希達と同じか、もしくは空と同じような道を歩んでいたことだろう。
いくら一般基準で見れば十分に強力な力をもらってこの世界に来るとはいえ、転移者の力は良くて中の上程度だ。
冒険者として活動していくにはこの世界はリスクが高い。
それに商人としてこの世界でやっていこうにも、技能の補助がなければ知識があったとしても何も作れずに終わる。
自分たちが普段から使っているスマホすら、その中がどうなっているか分からないような高校生が、いきなりこの世界に来て何かを生み出せるわけもない。
ただエルピスはそれを可能にさせてもらったのだ、目の前の影に。
なんの対価もなく、なんの脈略もなく。
いずれはどこかでその真意を聞こうと思っていたが、まさかこんな所に置き土産をしていたとは意外も意外だ。
「そう卑屈になるなよ、自分の力で君は生きていきたんだ。
最初は俺だが最後は君、創生神は作り出すもの、育てて育むのは他の神がやってくれる」
「随分と饒舌に喋るようになりましたね。
さっきまではこっちの言葉に合わせて来ていたのに、もうお遊びは終わりにしたんですか?」
「君だって合わせてたじゃないか。
いや、違うな。会うんだよ自然と、君が考えていた鏡ではないけれど、君と僕は同じで、だけど違う。
もちろん僕は既に死んでいるし、俺は君になっている。
ならばいまこうして喋っている僕はと言えば意識の残像、言わば幽霊と言ってもいい存在だ」
創生の神が幽霊に、神の世界の上下関係がどうなっているのかは、軽く神話を読んだことがある程度の知識しかないエルピスには詳しくわからないが、降格どころの話ではないだろう。
だが幽霊の中でもレベルの低い地縛霊になった創生神は、こうしてエルピスの前に現れて喋っている。
思うところはないこともないだろうが、そこまでして何かをエルピスに聞いておきたかったのだろう。
それがなんなのか、エルピスが切り出そうとすると創生神が手でそれを静止する。
「まぁ待てよ、落ち着こうじゃないか結論を急ぐのは良くない。君が来ない間の数億年も僕はここで暇を潰してきたし、これからもそうするつもりだ。
つまりどれだけ時間がかかってもいきなり消えたりはしない、創生神である僕がそんなヘマはしないからね」
「数億年ってまた規模の大きい話ですね。千年だの万年だの周りにいますが、億は初めて聞きましたよ」
「神だからね、創生神だからね。君もいずれはそうなるし、そうなるべきだ。
だって死にたくはないだろう? 誰かを残してさ」
「その誰かを残して死んだ貴方が! そんなことを言いますか?」
影の胸倉をつかみ上げ、犬歯をむき出しにしてエルピスは吠える。
セラは泣いていた。
初めて会ったとき、こちらに飛びかかってきたセラはいまだからこそ思い出せるが、巧妙に隠してはいたものの涙を流していた。
ニルだってそうだ、共に遊んでいるときは楽しそうにしているが、ときおり一人で外に出ては月を眺めながら物思いにふけっている。
二人とも創生神の影を追いかけて、影が消えたから光になったエルピスについて来ている。
もちろんセラの告白を疑うわけではないし、ニルの愛情を否定するつもりは一切ない。
ただきっかけは創生神であることは揺るぎようのない事実であり、だからこそエルピスは自分に、創生神に何故なのかと問いかける必要がある。
「ゆっくり喋ろうって言ったのにせっかちだねぇ。
なにか良いことがあったのか、聞きたくなっちゃうくらいだね」
「そういや小説読んでるんでしたっけ。はぐらかすのに使うのは感心しませんがね」
「いやそう言うわけでも──違うか、そうなんだろうね。
神って嘘をつかないんだけど、神が神である所以としてそういうものがあるんだけれど。
嘘をついてしまったということは、君にあった影響で僕も君に近付いているらしい」
「魂の惹かれあい、とでも言っておきますか? あるのかないのか知りませんが」
「あるかないかで言えばあるね、僕が作り出した機能のうちの一つだ。
人は一目惚れとかなんとかいうけれどね。
君のメイドちゃんは偶然魂が惹かれ合う内の一人だったってわけさ」
どこまで知っているのだろうか。
数億年間この場にいたのが事実なら、目の前の神は、幽霊は、亡霊は、何も知らない筈だろう。
だというのに最初に出会ったときにはエルピスの名を、次にはエラの事も、はてはエルピスの知らないことまで。
全能こそ無くなったかもしれないが、全知は健在なのだろうか。
全てを見通す神の目は、エルピスにとっては非常に興味深くもある。
「それでだけど答えるよ。いまは──セラだね。僕がつけた名前もあるにはあるんだけど、僕が転生して名を無くしたんだね。
その点に関しては君の方から謝っておいてよ、僕なんだし。
良い名前だねセラって、君は適当に付けたつもりみたいだけれど、この場合の適当はいい加減な方の適当だけれど、この世界には適切はあっても適当はないんだよ。
全てが全てあるべきものはあるように作られているんだ、名も然り、強さも然りね。
それでセラを置いて転生した理由だけれど、少し長くなるがいいかい?」
どこからかエルピスと同じような椅子を取り出し座った創生神は、腕を組みながら笑い声を上げてそう言った。
時間はいまのエルピスにとって有限ではない。
ただこれが鍛治神の試練としてカウントされるのであれば、むしろ時間をかけることにこそ価値があるとも言えるだろう。
だからエルピスは創生神の問いに対し頷くことで肯定の意を示す。
「うなずくと思ったよ、僕ならそうするだろうし。
それでだが大まかに分けると二つなんだよ、セラを置いて僕が転生した理由は。
ああニルに関してはまた別の話だから後でするよ、いまはセラの話だからね。
それでなんだがセラは、あの子は冷愛と死を司る神なんだけど、それは知ってた?
……その分だとどうやら知らなかったようだね、だろうと思ったよ。質問なんだけどさ、愛の反対ってなんだと思う?」
「憎しみか無関心か、はたまた怒りか、どれかまだ答えは見つけれてません」
これまた哲学的な問いだろう。
人によって答えが変わってしまうようなそんな事ではあるが、創生の神の答えはエルピスも個人的に気になる。
自身の指標にする必要はないだろうが、世界の指標ではあるはずだからだ。
脚を組みなおし手を何度か弄った後に、創生神は静かに語り出した。
「いやいい線はついてるよ。愛の反対は憎しみでもあり無関心でもあり怒りでもありそれら全てを忘れることにある。
人は忘れられて初めて死ぬって言うけど、あれって実は本当なんだよ。
天界に居ても地獄にいても、狭間の空間だろうが虚無だろうが、誰かが覚えている限り、幽霊だろうが亡霊だろうが悪霊だろうが悪魔だろうが、生き続けることができるんだ」
「だからこそ愛の反対で死ですか、納得できるような出来ないような」
「だからこそ彼女もそれに納得していないから隠したんじゃないかな。
彼女の真意は今となってはもう分からなくなってしまったけど、それでも僕が知っている彼女ならそんな理由だと思うよ。
それで続けるけど冷愛と死を司る神である彼女の敵として、憎しみと生を司る神がいるんだよ。
名前は…確かドゥヴァなんとか、言ってみればセラとこのドゥヴァはお互いがお互いに弱点を持ち攻略法を持つ天敵なんだが、こいつの存在が一つ目だ」
「それと転生した事とどんな関係が?」
「俺がドゥヴァを殺したから。神が転生するのには死ぬか生かされるか、どちらかをされないといけない。
ドゥヴァの場合は後者だね、ただ俺も憎しみと生を司るドゥヴァと戦っている最中にヘマして、気づいたら転生させられたわけだよ。
まさか自分の作った世界の住人として転生するなんて夢にも思っていなかったけどね」
自らが作った世界に生まれると言うのは、一体どんな気分なのだろうか。
ロームに聞いた話では破壊神にすら勝てる創生神のことなので、それほど苦戦せずに終えたのだろうがその代償が転生というのはこれまた高くついた事だろう。
強くなる転生ならば人間関係の放棄さえ許容できれば、長期的に見ればメリットしかない。
だが転生する上に弱くなるのでは、デメリットしかない。
創生の神から一般人になるのは、幽霊になるよりも分かりやすく弱体化している。
「実は三歳くらいまでは俺が君の代わりに体を動かして言葉を返してたんだよ。
じゃないと君の家庭環境だと死ぬからね、あの世界では使わないようにしてたんだけど、何度か魔法を使ったのを今でも覚えてるよ。
痛みはあのとき初めて味わった、妹が産まれてきたときの感動もね。
創生の神として長く生きたけどさ、初め自分の手以外で作られた物に触れられた。
ドゥヴァの呪いの影響かやけに周りの人間には嫌われたけど、妹だけは僕の力でドゥヴァの呪いから守れたから妹だけは後をついてきてくれたのを今でも覚えている」
「自慢の妹ですからね、可愛かったでしょう?」
「ああ、可愛かったよ。大切にしなって言いたいところだけれど、すれ違いが起きているようだからね。
それに気づくまでは大切に出来そうもないか」
「まぁもう転生してしまいましたし、それに思春期だからすれ違いもありますよ」
昔はお兄ちゃんお兄ちゃんとついてきてくれた妹も、絶えず両親や友達から馬鹿にされている兄を見て疎遠になったのがエルピスが高校に入る前だったろうか。
廊下であっても会釈する程度の関係になったのを思い出していると、創生神は頭を押さえながらため息をつく。
全知である彼からすればエルピスのやりかたは酷く滑稽に映ったのだろう、だがあれでもエルピスなりには頑張ったのだ。
「まぁそう言う事でこれが一つ目。転生した理由はこれが全部さ、案外聞いてみると呆気なかったりするもんだろう?」
「まぁそれはそうですが……二つ目はなんなんですか?」
「二つ目はこれまたセラ関係なんだけど、神ってさ──」
「はい」
「──結婚できないんだよね」
「は?」
この神は一体何を言っているのだろうか。
冗談なのかそうなのか、判断したいが相手に顔がないのだから雰囲気で探るしかないわけだが、いくつかの技能が嘘でないことの裏付けをしてくる。
嘘であってほしいという思いもあるが、とはいえ事実なのならば事実として受け止めるしかないのだろう。
「神様ってそりゃ愛の神とか居るから結婚って概念自体は知識としてあるんだけど、永劫を生きる関係上どうしても子供を作ってそこで終わっちゃうんだよ。
神にとって結婚生活が非効率的な上にメリットもないから。あと感情もほぼないし」
「つまりですけどもしかして……」
「そーいうこと、考えてること大正解! 創生神マーク贈呈してあげるよ」
キャラ変更が早すぎる。
真面目キャラで出てきたかと思えば、次は急におちゃらけだす。
神が自身の理解の範疇にない存在であることは既に知っているが、それにしても創生神は定まらないものだ。
ワッペンのようなものを手渡されそれをポケットに入れつつ、エルピスは苦言を呈する。
「貰えるんならもらいますけど……自分の事ながらなんだか間抜けですね」
「いやいや、大事な事だよ感情があって愛情があって、好きって言えて、胸が高鳴って、肌に触れて息が止まる。
なんでもできる神だからこそできない非効率的で不格好な、生殖行動を目的としているわけでもない本当の感情から来る思い。
愛を司る神であるところのセラにこんな話したら怒られそうだけどね」
「怒りませんよ。きっと泣きます、そういう子なんですよセラは。
気高く誇り高く、だけど涙もろい。そんな女の子なんですよ」
「知ってるよ。なんてったって君の中の恋心、三割くらいは僕が大元なんだぜ?
まぁその三倍以上君がセラのことを好きってことだけどさ」
まったく負けたよ、そう言いながら笑う創生神はまだ出会ってから少ししか経っていないが、随分と嬉しそうだった。
確かにエルピスもセラを一目見た時から、自分の中に芽生えた感情には気がついていた。
思えば確かにいう通り創生神の気持ちも関係しているのだろう。
「セラもそうだけどニルだってそうですよ?
僕のために頑張ってくれる、僕なんかじゃ比較にすらなれないほどの、良い子です」
「それも知ってる。ニルとは何度も戦ったからさ、僕が天界に居た時は味方になってからもほとんど会話しなかったけど、ニルの恋心だけは知ってたから」
「罪な男ですね女の子二人泣かせるなんて」
「その分君が笑わせてくれているから良いんだよ」
ニルの恋心を分かっていながら突き放すでもなく放置した創生神に対し少し怒りの感情が湧くが、とは言ってもいまさらぶつけたところで意味はないし結局間接的に自分を攻撃するだけだ。
それよりもエルピスは一つだけ気になったことを聞いてみる。
これだけは聞いておかなければ、今後エルピスは二人に接するときに戸惑う可能性がある。
「──自分じゃなくていいんですか? 僕で、彼女達を幸せにするのがエルピスで」
「おいおい、決意が揺らいじゃうようなこと言わないでくれよ、今からでも君の体奪いたくなっちゃうじゃん。
なんて冗談は別として、いいよ。俺じゃなくていい、ぶっちゃけエルピス、君じゃなくてもいい。
僕に感情というものは本来存在しないけど、もし感情としてこの気持ちを表すなら、彼女達が幸せにすらなれば僕はそれが幸せだよ。
いつかそういえばセラに同じ質問したことがあるんだけどさ。
その時の受け売りだけど、送った感情を送り返して欲しいのが恋、送った感情を受け取られずとも幸せにさえなってくれればいいと思えるのが愛って言っていた」
「愛してるんですね二人のこと」
「ああ。だからちゃんと幸せにしろよ、五人とも」
元よりこの世界の誰よりも彼女達を愛するつもりだったが、さらにより一層その思いを強くする。
創生神の代わり、とは言わないが創生神の思いも背負って四人を愛することくらい難しくない。
背負うものが多くなるのはよくないが、それくらい今の自分なら背負える自信がある。
──っと、そこまで考えてエルピスはふと気がつく。
創生神は今確かに五人と言ったが、エルピスの周りにはいま五人もいない。
「五人? 四人ですよエラ、セラ、ニル、アウローラです。ちゃんと覚えてくれないと困りますよ」
「五人で合ってる、全知だからね、先も見通せるってわけさ。そう遠くない未来だ、気張っていけよ」
「聞いてないんですけど、なんですかそれ!?
誰と一体どこでどんなフラグがどういう風に立つんですか!?」
「おいおい騒ぐな。次の試練への転移が始まるぞ、禅問答はまだちょっと続くが合格点取った後の残り問題みたいなもんだ。適当に答えても合格できる」
そんな事エルピスにとってはどうでもいい。
質疑応答も戦闘も、いま創生神が言った言葉に比べれば警戒するまでもない。
浮気すれば殺す、そう言われているのにもしかして自分が他の女子に手を出すのだろうか。
自分では絶対にしないと思っているが、世の中に確実なんてことは存在しないのだ。
「それはありがたいけど質問に答えろ! というかセラとニルに会え!
見た限りもう呪いも解かれて自由になってるだろ!」
「残念だけど俺はもう創生神じゃないからな、力も残りカスしか残ってない。
一人隠居でもしてるさ、どっかでな」
創生神がそう言った瞬間、エルピスの身体が少しずつ光り輝いていく。
転移魔法の兆候だ。
だが転移魔法も所詮は魔法、魔神であるエルピスならば無効化する事など造作も──
「この転移魔法阻害できないっ!? 最初っからこのつもりで転移陣も組んだな!?」
「鍛治神の娘がこの迷宮の完成法を教えてくれって言ってきたからな、今回の会話はその代わりってわけ。
まだまだ知恵がないな少年! 達者に生きろよ」
「くっそっっ!! 絶対セラとニルの前に引きずり出してやるからなっ!!」
セラにもニルにも心残りはあるはずだ。
余計なお世話ならエルピスもしないが、神としての直感が合わせるべきだと告げてくる。
エルピスに思いを伝える必要などない、直接二人に伝えればいいのだ。
「おおこわ。せいぜい捕まらないようにするよ──ああそうだ、これだけは言っておかないといけないんだった。
僕はこれから幽霊としていろいろこの世界を楽しむけど、君が失敗しないように三つ僕から忠告だ、焦ったら荷物の底を見ろ、迷った時は後ろに下がれ、どんな誘惑でも一度負けろ」
「好き放題言って逃げるのか!!」
なんとか転移に対して抵抗していたが、無理やり身体が地面から引っ剥がされ転移が始まる。
消えゆく視界の中でエルピスが視界の端に捉えた創生神は、かつての美貌を取り戻し何かを憂うような表情を浮かべていた。
息を飲んでしまうほどのその姿に見惚れていると転移が完全に終わり、身体が魔素に変換され何処かへと飛ばされていく。
「さよなら僕の分身体。我が子とも言える愛しいエルピス、せめて君の物語がハッピーエンドになるように僕も黒子として動くよ。
世界がそうなることを望んでいる限り」
そう言って創生神の抜け殻は霧となって消えていく。
かくしてエルピスと創生神の一時の逢瀬は終了を迎えた。
この出会いが今後この世界にどう関係してくるのか、それは創生神しか知り得ない。
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