第15話 霊感女子エイミーちゃん
さて、前回エイミーの幽霊話をしたついでに、彼女との話をもう少ししようと思います。
留学中、一度彼女の家に泊まったことがありました。実は彼女の両親は、結構な大企業に勤めていて、他の剣道部員同様、ご自宅は大変リッチな感じ。
どビンボー女子大生にとっては、なんかもう眩しすぎて。床、大理石だし。つめたいし。光るし。
彼女の実家の部屋は多分、30畳くらいあったと思います。個室にしては凄まじくでかい部屋でした。
で、その日は、彼女の部屋のキングベットを間借りして、夜を迎えました。
そして深夜。
多分、二時頃だったと思います。
ふと、目が覚めてしまったのです。
ちらりと横を見ると、エイミーは気持ちよさそうに寝ていました。まだ夜中だし、寝直すかと目を閉じようとしたのですが。
なんていうか、空気が違うのです。
私はまったく、霊感的なものはないし、その時まで不思議な現象を見たことがなかったので、どう違う、というのがうまく説明できないのですが。
空気が冷たいような、ピリピリとした感じ、って言ったらわかるでしょうか。
で、ふと、寝る前にエイミーが話していたことを思い出したのです。
「お寺で除霊的なものをした後も、また同じようなことが起こるかもしれないからって、念仏みたいなのを教えられたの。で、やっぱりたびたび、何かがやってくる感じがあって」
くそう。寝る前にあんな話をしやがって。眠れないじゃないか!と、憤慨しながら、話の続きを思い出す私。
「壁の外をね、蛇が這うように、ずるり、ずるりって、何かがはってきて、家の中に入ろうと、窓を、カリカリ、カリカリって引っ掻くの」
やな感じがして、窓の外に耳を覚ます。
でも、窓の外から気配はしません。ホッとして力を抜いたところに。
「それ」はきたのです。
初めは、遠くからでした。
カツン カツン
部屋の、ドアの辺りでしょうか。
人間が、爪で床を叩くような音が聞こえました。
恐れ慄き、体がすくむ私。
空気も、なんだかピリピリ感が増した気がします。
カツン カツン カツン
だんだん、だんだんと、その音は近づいてきました。
いよいよベットの真下に置いておいた、スーツケースを叩く音がして、カツン!と大きな音を立ててそれは止まりました。
その瞬間、私の左腕に電撃のようなものがピリピリ、と勢いよく走ったと思うと、エイミーが首を掻きむしりながら、苦しみはじめるじゃないですか。
えー。まじか。こういうのどうするの。
とりあえず、苦しそうなので、起こそうと試みたんですが、真っ青になって苦しみ続けるエイミー。
結局、本人がお寺さんで教わったという念仏みたいな言葉を唱えると、フッと、それがいなくなったようで、ゼエゼエ言いながらエイミーが飛び起きました。
「いま! 何かに! 首を絞められた!」
「まじか」
「くっそー! ファーック!」
心霊現象にあった時、国民性が出るなぁ、と思ったんですが。怖かったぁ、とか言って泣くのでは無く、怒り狂ってファック!と叫ぶのがアメリカ流らしいです。
※エイミーだけの可能性もあります。
なお、彼女はこの時だけでなく、継続的に似たような目にあっていたので、再度お寺さんに行くことをお勧めしました。
心霊現象とかはよくわからないけど、心霊関連で遊んだりふざけたりするのは多分よくない、と、私はこの時学んだのでした。皆さんもお気をつけて。
うーん、怖かった。
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