第6話 リアルに剣道部やん

 私が通っていた語学学校は、大学付属の名の通り、大学の敷地内にありました。

 日本の大学も大きいけど、アメリカの大学は桁違いにデカイ。


 大学内に寮がいくつもあって住めたりするし、バスも走ってるし、授業から授業へ移動するのが、かなり大変だったりします。(自転車、スケボーは移動手段として結構見かけた)


 見学日当日、私は自分が住むマンションの近くからバスに乗り、剣道部の活動する体育館へ。ドキドキしながら、体育館の入り口を開いて中にはいりました。


 すると懐かしい、防具の匂いが。


(わあ、ちゃんと剣道部だ!)


 剣道部に所属したことのある皆さんは共感いただけるでしょう。あの独特の防具の匂い。あれを嗅ぐと、「ああ、これから(死ぬほどきつい)稽古がはじまるんだな!」という覚悟にもにた気持ちになることを。


 おどおどしながら中を覗き込む私に気づいたのは、主将のマット。

(サイトで写真が出ていたので、すぐわかった)


「あ、イチカちゃん? ようこそ剣道部へ! いや〜日本人の女の子が来てくれて嬉しいよ! Hey guys, she is the one I talked to you ahead. Her name is Ichika Yokoumi! (おいみんな!彼女が事前に話してた、横海イチカちゃんだよ)」


 メールだけでなく、超流暢なマットの日本語に圧倒され、驚きつつも見学場所に誘導される私。


 周りを見渡してみると、意外に日本人の姿は少なく、アフリカン・アメリカン、メキシカンアメリカン、ヨーロッパからやってきた移住者、韓国系・中国系などのアジア系アメリカ人など。まさにサラダボウル的な参加者の面々がそこにはありました。


(あたりまえだけど、ちゃんと剣道のかっこしてる)


 一体どこで売ってるんだろ、と思いながら、剣道着を着た剣士たちを眺める私。

 なお、この疑問は、のちのち解消されることになります。


 たしかこの時話しかけてきたのは、緑色の髪の毛をした、中華系アメリカ人のエイミー、コーチ的立場の同じく中華系アメリカ人のトニー。


 あと、私と同様、付属語学学校に通っている女の子で、すでに在籍していたエミちゃん。(ここまですべて仮名)


 緊張してしまうと、言葉が出てこない私でしたが、優しい剣道部部員の気遣いに励まされ、なんとか会話をすることができたのでした。


 なお、その場にいる面々を見て気づいたことが。


「あれ、マットさん、これ、剣道部……だよね? 大学の」


「ああ、剣道部はねえ。そんなに人数いないから。ここはね、大学の剣道部の人も練習してるけど、町道場みたいなものなの。加藤先生って日系の先生が教えてるんだよ」


 名称は「A剣道部」だったのだけど、実は私が参加したのは、A大学剣道部員も練習に来る、「町道場」だったのでした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る