恋の始まる・・・ちょっと前

福江まーさ

第1話 恋の始まる1分前。大みそか、カウントダウンライブは音漏れで

目の前の大きなドームにどんどんと人が吸い込まれていく。


ここは大銀河政府首都コロニー。

ハイソサエティーな人々が住んでいる。行政機関も多くて、人の出入りも多い宇宙建造物・・・コロニー。





それをウサギ系のニーナは大きな耳を左右に垂らして恨めしそうに見ているしかない。ニンジンを口にくわえながら。


ここはコロニーの中でも大銀河の大首都。

そして今日は大晦日で大銀河制定1000年のお祝い。

平和になって1000年目ってこと。



カウントダウンライブがもう間もなく始まる。


招待されたアーティストは大銀河系の超!!超!!有名アーティストばかり。

大銀河政府主催だから偉い人たちもたくさん来ている。


・・・らしい。


さっきから覗いている携帯画面の中継はそんなことを言っているから。


それよりも、なによりも、もうすぐニーナの押しのカツヤが出る。


わ~~~ん。生で見たかった。生カツ!!!久しぶりのライブ。


辺境の地でも生中継もされるほど大きなライブ。


そしてカツヤの復活ライブ。


ああ・・・最押しの・・・カツヤの復活を生で見たかった。



政府主催の記念イベントに久々に復活したカツヤ・・・。。もちろんプラチナチケットで。動物星雲ウサギ星から遠征するだけでやっとのニーナには手に届くはずもなく。スポンサーチケットの応募・・・頑張ったんだけど・・・・幸運の女神は微笑まず、でもあきらめきれずに会場にやってきたけれど・・・。


せめて音漏れでもいいからと思ってここまでやってきたけれど・・・着飾った人たちが出たり入ったり姿を見ると、ちょっとむかつく。カツヤを見ないなら、私にチケットを譲って!!と思ってしまう。




今から入る人たちはもっと後の大トリのDEVAを楽しみにしているんだろうな・・・・。



音が流れてきた。ニーナはがっくりとうなだれる。うなだれた先にはウサギの手のひらに収まるぐらいの小さい画面。

毛並みのいいうさぎが歌って踊っている。イケメンな犬とイケ女(と想像できる)猫とイケメンのうさぎカツヤとかわいらしいたぬきともふもふのキツネと小回りの利く猿がキレッキレのダンスで同じステージに立っているのだが・・・ニーナにはうさぎのカツヤしか目に入らない。


「かっこいい~~~」


食い入るように見る。

外からは大音量。


三曲。

歌とパフォーマンスが終わった。


はぁ。

おわっちゃった。


ニーナは心の中で思った。


じゃ、年越し恒例のやつをゲットしに行くか。カツヤが教えてくれた年越しのアイテム。

売っているところは確認した。売店までいってこよう。


大会場、大人数のライブ会場の売店は大混雑。


並んで並んで並んで手に入れた『緑のたぬきそば』

これはカップ麺と言って、お湯を注いで三分待つとたべられるすぐれもの。


これは年を超える前に、なるだけ切らないように麺をつるつると吸って食べるもの。

カツヤの動画配信で上がっていた。大好きな食べ物なんだって。この『緑のたぬき』は後のせのかき揚げに七味唐辛子を少しかけて少しだけ汁にくぐらせて、カリカリのまま食べるのが!!おいしい!!


今日も安定のおいしさ!!!カツヤ!おいしいものを教えてくれてありがとう!!カツヤも楽屋で食べているかな!同じかも!!うふふふ・・・


さあ、麺を食べましょうかとフォークで麺をスープから引き上げる。

さあ、口の中に・・・

と思ったその時


「あの・・・・」

声をかけられた。

声のほうを見上げるとこわもてのシェパード系の男の方も顔がにゅっとこちらを見ている。


「すいませんが、少し分けてもらえませんか」


・・・

急に何?何言ってる子のシェパード君?!

黙っていると


「いや・・・こっちと少し交換・・・してもらえませんか?」


こわもてのシェパード系男性の手には、同じような赤い器。


「すいません・・・押しのすきな『緑のたぬき』を一口食べてみたくて・・・」

こわもてのシェパード系雄系の方は眉毛を八の字に下げて

「すいません・・・急に・・・そうですよね・・・カツヤが年越しには食べるって言っていて食べたくて・・・売り切れで・・・・スイマセン、突然・・・カツヤと同じウサギ属だったので・・・かわいいな・・・とか思っちゃって・・・いや、俺・・・何言ってるんだろ・・・いや・・俺・・・けして、怪しいモノじゃ・・・いや、結構怪しいか?あ、スイマセン・・・」

なんだかシェパード男子・・・照れながらぶつぶつ言っている。




「あなた。カツヤファン?」

シェパード男子は頷く。さ

「一口イイですよ」

緑のカップをシェパード男子の前に差し出す。嬉しそうに両手で緑のカップを受け取って一口。ずずっ

「うめ~~~」

空に向かって叫んだ。


「おいしいですよね」

二人は見つめあって。笑った。。

後ろでは宇宙世紀最高のDEVAがカウントダウンのアリアを歌いあげている。

見つめあう二人の先には新年を祝う花火が・・・・


恋が始まる1分前





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