公爵令嬢は偽物により
紅 蓮也
第1話 偽物現る
ソフィア・フォン・サンクチュアリは公爵令嬢で王太子の婚約者候補であった。
サンクチュアリ公爵家はイスタール王国にある武に秀で最強の騎士等を輩出してきた武門のヴァスカビル公爵家、魔法に秀で最強な魔導師を輩出してきた魔導のマリークヮント公爵家、賢く多くの宰相や軍事参謀を輩出してきた賢智のレインズ公爵家と並び聖女を輩出してきた神聖のサンクチュアリと呼ばれる四大公爵家の一つだ。
そんな名門の家系に生まれたソフィアに対する回りからの評価は王太子の婚約者候補であるが容姿は普通、聖女の家系としての能力はそれほど高くなくパッとしないというものだっだがソフィア自身は家族も含めた周りから何を言われようと特に気にしていなかった。
そんなある日、サンクチュアリ公爵家にソフィアと同い年の一人の女性がやって来てこう言った。
「私が本物のソフィア・フォン・サンクチュアリである。」
その女性は容姿端麗で本物だという証拠に見せた聖属性や破邪の力はソフィアだけでなく歴代聖女たちより高かった。
ソフィアの家族は、納得し現れた女性を本物のソフィアと認め、ソフィアを偽物として公爵家から追い出した。
そして登城し謁見した王太子のカルトリウス殿下は一目見て惚れ本物のソフィアを名乗る女性を婚約者とした。
追い出されたソフィアは、特に気にせずそれに従いこれからどうするか考えた。
「とりあえず、名前はソフィーとなりましょうかね。」
ソフィーはそんな感じで婚約者候補のカルトリウスに好意があったわけでもなく、妹と生まれたばかりの弟以外の家族が好きだったわけでもないのでショックは特になかった。
そして大切な友はいるがこの国を聖女として護りたいとも思っていなかった。
「よう。ソフィアじゃないか。」
これからどうするか考えていると三人組が現れ、一人がソフィーに声をかけてきた。
「あら、バルバドス。私はソフィアではなくなったの。これからはソフィーと名乗るからよろしく。」
「ああ、本物のソフィアを名乗る女が現れて、公爵令嬢の立場も王太子の婚約者の立場も取られたんだったな。
まあ、俺たちには関係ないし俺たちの関係が変わるわけでもないけどな。ソフィーもその感じだと特に気にしてないな。」
早速、バルバドスは言われた通りソフィー呼びをしたし、サンクチュアリ公爵令嬢のソフィアでなくなても自分たちの関係は今まで通りだと言った。
「そうね。あなたたち三人は私が本当の自分でいられる大切な仲間よ。」
「嬉しいこと言ってくれるわねソフィー。それでこれからどうするつもりなの?」
「他国に行くのもいいけど、この国と近隣の国の間にある魔の森で好きなように暮らそうかとかと考えているところよアメリア。」
この国と他国に挟まれる広大な魔の森と呼ばれる森がありそこは魔物の巣窟で危険なのでどの国の領土でもない。
ソフィーは結界が張れるし、魔の森には彼らがいるのでそこで好きに暮らそうと考えていたのだ。
「じゃあ、俺らも着いていく。」
「あなたたち三人とも公爵家の跡取りじゃない。大丈夫なのしら……特にカイル。」
「「「大丈夫」」」
バルバドスは武門のヴァスカビル公爵家のアメリアは魔導のマリークヮント公爵家のカイルは賢智のレインズ公爵家のそれぞれ次期当主なのだ。
サンクチュアリ公爵家は当初はソフィーが次期当主だったが王太子の婚約者候補になったことで妹のマリアベルが次期当主となっている。
ヴァスカビル公爵家には弟が二人、マリークヮント公爵家には妹のアメリアに次期当主座を取られた兄が一人と弟が一人、レインズ公爵家には弟一人に双子の妹二人いるから問題はあるものの跡取り問題は大丈夫だろうけど……
「俺ら家を勘当されてきたからな。」
「よく各家のご当主が許したわね。」
「ソフィーに着いていく言ったらキレられて思惑通りに勘当してくれた。末の弟のマッドに会えなくなるのは寂しいがな。」
「同じく。私も弟のマーロンに会えなくなるのは寂しいわ。」
「俺もだな。妹のミーシャとアイシャに会えないのは寂しいな。」
「私も妹のマリアベルと弟のクワトロに会えないくなるから寂しいと思っているから人のこと言えないけど、なら私に着いてくるのやめたらいいじゃない。」
「それはないな。この国は強国であるがゆえ他国との戦争もなく、脅威の魔物も結界で護られているからな長年の平和時代で王族も貴族も腐りきっているし、いいことではあるが平民も安心しきって護られて当然だという感じだし、危機感がないからな。
この国にいるよりソフィーに着いていった方が楽しそうだ。」
確かに平和なことはいいことだけど、長く続きすぎると政の腐敗、民の危機感の無さに繋がるのよね。
「そうなのよね。平民は護ってもらって当然って感じで、自分たちが原因で生活が苦しくなったのだとしても王族、貴族の所為にするからね。
それなのにこれまで良くしてくれていたソフィーに対しては見てみぬふりでしょう。頭きちゃうわ。」
「まあ、王族や貴族が民の暮らしを護る義務があるし、平民はどんなに裕福になっても不満があり自分勝手なのは仕方ないことだからどうしようもないけどね。」
そうなんだよね。どんなに裕福になろうと絶対に何かしらの不満がでてくるんだよね。
これはどうにもできない。
そんな話をしていると私たちを呼ぶ声がした。
四人が振り返ると……
「お兄様、お姉様、待ってください。」
マリアベルたちであった。
「マリアベル。クワトロも連れて……」
「マッド。なぜここに……」
「マーロン。どうしたの?」
「ミーシャ、アイシャ。どうしたんだい?」
みんなはそれぞれの弟や妹が来たのが疑問に思い問いかけた。
「ソフィアお姉様こうなったことで、バルバドスお兄様、アメリアお姉様、カイルお兄様がソフィアお姉様に着いていくだろうと思い、私たちそれぞれの家を出て着いていくことにしたんです。」
代表してマリアベルがそう答えた。
三人の行動を私たちより年下の子に読まれているわよ。
「許可は取ったの?特にマリアベル。クワトロまで連れてきて、サンクチュアリ公爵家の跡取りがいなくなっちゃうじゃない。」
「私たちはまだ成人前ですので何を言っても聞いてもらえないと思い、手紙を書いて置いてきました。
クワトロを連れてきたのは置いてくると可愛いクワトロが不幸になると思ったからです。
サンクチュアリ公爵家は無くなるなら無くなればいいと思いますし、どうしても残したいなら王太子の婚約者であっても本物のソフィアだと名乗ってお姉様の立場を奪ったあの女がやればいいです。
それにマッドも一緒ですし……」
一応聞きはしたけど確かにクワトロはあの家にいたら間違いなく不幸になると私も思うわ。
よくやったマリアベル。
「マーロンはいいの?あの家では私の次に優秀なのだからあのバカ兄ではなくあなたが次期当主になれるのに……」
「あの腐った家を私が継ぎ変えるより、姉様たちに着いていった方が楽しそうですからあんな家に興味はありません。」
「私たちもはるかに劣っているのにカイル兄様より賢いと思っているから愚兄やそれをほめる愚親とは一緒に居たくないです。」
「自分は尊敬するバルバドス兄に着いていきたいと思ったからです。
それにマリアベルも一緒ですから……」
弟妹のそれぞれの思いを聞きました。
それにしてもマリアベルとマッド。
私は聞き逃しませんでしたわよ。
二人は好きあっているのね。キュンキュンするわね。
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