第6話隠していた依頼の正体

人を殺す。その行為を見たのは彼と初めて人間相手の依頼を受けた時だった。


彼は言っていた。


人間は弱い。どんなに強くても致命傷を喰らえば死ぬと・・・・。


彼が初めて人を殺すところをみた。血を浴びた彼を見た時、私はあの時の質問の意味がわかった。


_____人を殺すって、犯罪者でなら許されると思うか?


彼は商人を助けたはずなのに、怖がられていた。感謝はされていたけど、私はあの時質問に答えられなかったことに後悔したのだ。


「今まで、私に言えずに犯罪者を殺していたの?」


「ああ」


私は宿に帰った後、コバヤシに聞いてしまった。


「ああ。カネを稼げる依頼はそれしかなかったんだ。そもそも魔物退治が出来るほど強くない」


「彼は皮肉っぽく私に言った。彼は続けて、お前の前ではこれ以上嘘はつけなかったんだ、と」


私は怖いというより悲しかった。何かを彼は諦めているような目だった。


・・・初めて、その目に気づいたのだ。ずっとこうだったのかもしれない。


でも、


「私の知っているししょーは、違うよ」


「・・・?」


「私を魔物なのに犯すことも殺すこともなかったし、カリュドーンから守ってくれたし、何より私を裏切ったことはないし・・・」


魔物だからなのか、涙は流せなかったけれど。


「あなたはきっと間違ってない。生きる為なら武器を持った相手を殺す。なんて沢山あるんだから!」


精一杯、私は心を打ち明けたのだった。


「ありがとう。・・・ああ。なんかそういうことを言われると救われるな」


私は笑うと、


「ししょー、何か前に私が言ったことと同じこと言ってるー!」


彼も少しだけ笑った。コバヤシが笑ったところは見たことは滅多になかったからか、恥ずかしかった。


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