Season02 Case of 『久米夢実』
#01 朝はパンに八宝菜
久々にバイトのない平日。なのに。なのにだっ!!
「ヴェ、ヴェロニーって」
「むにゅむにゅ。まだ夜だにょ、ハルきゅん」
起きた瞬間、俺は盛大な勘違いをした。ここはヴェロニカ邸で、また俺は疲れて……ヴェロニカの誘いに屈して寝てしまったのかと。
それが、天井を見て、横を見て、27インチのデカイテレビを見て確信したね。
「なんでヴェロニーがここで寝てんだよぉぉぉぉぉ」
「うるちゃいおーっ」
「うるちゃいおー♡ じゃねえんだわ。ここ俺んち。ナゼ、オマエガイル?」
俺の記憶が正しければ、ヴェロニカ邸兼スタジオを出て、
気づけば朝。ヴェロニカがなぜか俺に絡みついている。しかもフリルのついたパジャマまで着てるからに、
「うぅぅん。あ、おはよ。ハ〜〜〜ル君♡」
「……あのぉ、どこからお入りになりましたか?」
「うん? えっとね。ドアをガチャガチャしてたら開いたから。するりと」
ああ、うんうん。ボロいからねぇ。大家さんに鍵と扉がそろそろヤバいっすって言ったばかりだったからねぇ。って、違ッ!!
お前、不法侵入2回目だからなッ!?
あのときは、NTR傷心で許したが、今度は執行猶予じゃすまさんぞッ!!
「何してんだぁぁぁ!! 俺はヴェロニーをそんな子に育てた覚えはないッ!」
「許してにゃんっ!」
「にゃん?」
「ああ、いけね。パイセン、つい別のキャラやってたもんでぇーつい口がすべっちやいましたぁ」
「……とにかく、離れてくれないか?」
「イヤ」
「邪魔過ぎる。そんでもってな。そ、その」
「なーにハルきゅん♡」
「そー」
「そぉ?」
「そーしゃ」
「そうしゃ?」
「ソーシャルディスタァァァァァァァンスッ!!」
という朝を迎えて、せっかくの休みに、こうして起こされたわけで。
俺は寝起きが弱い。限りなく不機嫌だ。このやろーっ!
「この家から引っ越せばいいのに」
「嫌だよ。結構気に入ってる」
「ふぅん。じゃあさ、あたしもここに住ん——」
「お断りだ。そうじゃなくても狭くてうるさいんだぞ?」
しっかし、パジャマ姿もカワイイのなぁ。
いや、性的興奮なんてしてないからねっ!
へい尻、パンツのラインが見えてるぜ!
ふふふ。面白いことをおっしゃりますね。
「むぅ。あ、そうだ。あのねあのね」
「なんだ、もう少し声のトーン落とせ。隣人の半グレがまたキレるからさ」
「ぇー」
「聞こえない」
「どっちなのッ! ああ、それでね。
あーはいはい。中学生のことね。うんうん。
俺も昔は中二病だったし。なんなら中学といわずに、大学のときなんてアニメ観てキャラになり切ってたからね。異世界ファンタジーの主人公みたいに。
クルミナたんは俺が守る——って。
って、違ッ!!
いや、お前んちじゃねえんだから。普通、一般家庭で厨房なんて言うか?
台所とかキッチンだろうが。
「どうぞ。ご自由に。ただし、火と刃物と缶詰と熱湯は使うなよ」
「……なんで?」
「怪我するから。絶対だぞ?」
「……分かった」
素直だな。ああん? ま、待て待て。待てぇい!
「な、なに手で全部ちぎろうとしてんだよ」
「だ、だってハル君がダメだっていうから」
「どんな料理を作る気だッ!」
「食パンとサラダと目玉焼きとウィンナー。それに
「ああ、それなら火も刃物も必要ないよなぁ〜〜って」
おかしくね?
八宝菜って言ったか?
なんでそこで八宝菜なんだ。マジで。その感覚はなんなんだ?
八宝菜には米だろうがッ!!
だいたい、手で千切って作れねぇぇぇだろがっ!!
火のは当然だしッ!!
「ああ、もういい。俺が作る。ヴェロニーは向こうでテレビでも観てろ」
「ヤダ。あたしが作る。ハル君においしいって言ってもらえるまでがんばる」
こいつは言い出したら聞かない。
ピンポーン。
誰だよ、こんな朝っぱらから。
玄関を開け——開かねえ。マジかよ。ヴェロニカの奴、本当に強引に開けたんだな。
仕方ねえ、強引に……このッ!!
扉が外れそうになったけど、なんとか開いた。
「おお、おはよ、シナモンちゃん」
「ヴェロ姉さん、大変です」
シナモンちゃんが血相を変えて立っていた。
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