#08 VS 萌々香
ってことで、朝食食って大至急出かける準備して、連れ出された渋谷の有名書店。シナモンちゃんとリオン姉さんはやることがあるからってヴェロニカと二人きり。
俺なんて昨日のバイトの服のまんま。朝から女子の風呂借りちゃったくらいにして。ここで鼻血が出たらアニメだよなって思っていたら本当に鼻血出てビビった。
とにかく、意識が
だって、美少女三姉妹の風呂だぞ? お背中流しますか? なんて入ってきたら窓開けて飛び降りようかと思うくらいビビってた。実際は扉越しに『ハルく〜〜ん、大丈夫〜〜?」なんて30秒おきにヴェロニカが声を掛けてきたくらいですんだけど。
「で。買い出しって、本屋のことか?」
「ううん。ここはついでよ。ついでに。ね?」
オトナな雰囲気だな。カフェのような書店だ。
ん? なんだ?
人だかりができている?
「なに? 『移りゆく季節に車輪を漕いで』? あくび丸サイン会? はぁ!?」
「ね? マジでファ○クでしょ?」
「ヴェロニー……言い方」
「てへ♡ で、サイン貰いに行こうよ」
あくび丸って、
よお、久しぶり。俺の彼女寝取っちゃっていただきまして、てめえぶっとばさせていただきます。ああん、やんのかコラ? 引っ越し屋で鍛えた俺の拳を受けてみよッ!
「ヤダよ。もう終わったことなんだから、わざわざ蒸し返さなくてもいいだろ?」
「ハル君は思い出したくもないかもしれないけど、まず復讐その1として、ハル君がなんのダメージもないように幸せいっぱいに暮らしてますアピールがいいと思うの」
「……どうでもよくね?」
「よくないのッ!! あのクズ男とクズ女の
ヴェロニカみたいな美少女じゃなければ、ドン引きだからね?
「俺も……悔しいし、憎いけど……すげえ惨めだけどさ。別にいいよ」
げ。
ヴェロニカが超絶美形の顔を歪めて、なんていうかな。
ほら、海外のドラマであるじゃん、そういうの。
「ハル君が良くても、あたしの気が収まらないよ。ハル君を傷つけた罪はマリアナ
よく聞き取れなかったけど、マリアナ会場よりも深いよっ、テシ系って聞こえた。マリアナ会場とテシ系ってなんだろうな。
「行こうッ!!」
「ま、待てって。袖を引っ張るなって」
長蛇の列に並ぶのはいいけど、ライブ配信あるって言っていなかったっけ?
こんなところで油売っている場合じゃねえだろ。
「配信間に合うのか?」
「大丈夫。配信は夜だから。間に合わなそうなのは打ち合わせ。最悪、リオン姉とシナモンの二人で適当に考えればいいでしょ。そんなことよりも、あたしにとってこのイベントは勝たなきゃいけないの。フラグよフラグ!!」
「……良くねえだろ。打ち合わせ大事だぞ。それとも、隆介にそこまで恨みがあるのか」
そういえば、『あたし達も葛島隆介に因縁がある』って言っていたよな。
よほどの恨みがあると見た。まあ、俺もないといえば嘘だけどな。だけど、隆介を殴ったところで馬鹿を見るのは俺の方だ。手を出した方が負けの世の中だからな。
決闘制度があれば、そりゃあ申し込まない理由はないけどさ。
しかし、サイン会って結構人来るんだなぁ。本の内容も良いけど、あいつ顔もいいからな。悔しいけど、完敗だな。
「ハ‥…ル君? 来てたの?」
ん? 誰……え。なんで、ここに。って、そりゃあいるわな。
偶然、前に並んでいる女の子が……
「も、もも、萌々香。よ、よぉ。」
「ハル君っ!! 何日かぶりだね!」
「あ、ああ。元気そうだな。萌々香」
ああ、そうだ、萌々香はヴェロニカが好きだっ———げ。
「え? だ、誰? この可愛い子……?」
「はじめまして。ただのモブキャラの村人Aでーす……。白井萌々香さんですよね。噂はかねがね彼氏から聞いておりますので」
ええええええ。『ヴェロニカに彼氏なんていない』ってシナモンちゃん言っていたじゃん!!
やっぱり
「は? 彼氏? え? ハ、ハル君の彼女……さん?」
「ええ。ピュアで一途で素直で賢い、そう、NTRなんて絶対にないないないないないないないない超絶純愛的お付き合いをしています。ねーっ!! ハル君♡」
うおおおお。腕に抱きついたときの弾力。それに温かい。柔らかぁ!!!
こ、これは……って違ッ!!
そうじゃなくて、いつの間に俺の彼女になったんだ。そんな夢のような話あるかーいっ!
アニメみたいに頬をつねって……痛ぇぇ!!
「現実かッ!!」
「ハル君は黙っていてね♡」
「そ、そうなんだ……へぇ。彼女さん可愛いね……」
「萌々香さんでしたっけ? ハル君とあたしは今、幸せなのでお邪魔虫しないでね♪ あらら、そんなお顔してどうしたんでちゅか〜〜〜? 泣くのか怒るのかどっちかにしたらどうでちゅか〜〜〜〜っ」
ヴェ、ヴェロニカ、挑発しすぎーーーーーっ!!
「……ハル君、彼女さん可愛いね。好きになったきっかけは?」
Vtuberとしてのヴェロニカは当然ファンとして好きだし、キャラだけじゃなくて、ちゃんとした人間としてのヴェロニカも相当カワイイと思う。そんな女性がこうして俺と一緒にいるなんて夢みたいだよな。
だけど、自分には
俺みたいな中途半端な奴を好きになってくれるはずがない。
だから、好きにならないように踏ん張らないとな。
それこそ、ちょっとしたきっかけで恋愛的な感情の崖から転落してしまう気がして。
それにやっぱり、ヴェロニカに彼氏がいるという情報を与えてはいけない気がする。ヴェロニカのためにならない。
だって、嘘だとはいえ、相手が俺だぜ?
「ごめん。ヴェロニーが
「え、待って。ヴェロニーって……え? パーティー・ライオットの? そういえば似てる〜〜〜すごいね、そんなに好きなんだ? そんなに似せてきちゃって。ファッションまで同じなんて。ところで、ハル君付き合っていないって言っているけど?」
「む……もうハル君は、本当に……ッ!」
「ハル君、クリスマスは暇? ねえ、わたしと一緒にフリー同士、おいしいものでも食べない?」
「ごめん。クリスマスは……」
「……このッ。ふぅ。落ち着いてあたし。違うよねぇ♡ あたしと一緒にケーキ食べるんだよねっ! ハル君?」
「二人共無理。だって——」
——バイトだ。ケーキ売り。ケーキ屋のヘルプ。
聞いていないフリすんなよな。
萌々香は「あ、列が動いた」とか言って、隆介に本を差し出した。嬉しそうにキャッキャと隆介と会話を楽しんでいるところを見ると、こいつ調子の良い奴だったんだな。付き合っているときは全然知らなかったわ……。
横を見たらさ、ヴェロニカが、
萌々香もここにいるってことはやっぱり隆介と関係を絶っていないってことだろうな。
そして、ついに俺たちの番。隆介はさほど驚いた様子もなく、「よお、
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