第25話 アラン暴走【アラン視点】
潜伏中の僕の目の前に突然、一冊の本が落ちてくる。
「は……? こ、これは…………?」
そこにはこの前捨てたはずの本と、同じものがあった。
しかし、前回と違うのは、これは僕にも読める文字で書かれているのだ。
これは……翻訳版か?
「読める……読めるぞ……!」
『追放勇者』と書かれたその本を、僕は夢中で読み始めた。
なんと、そこに書かれていたのはまさに僕自身のことだったのだ。
「ど、どういうことなんだ……!?」
その物語に出てきた僕は、まるで主人公のように活躍していた。
そしてジャスティスが悪役として描かれている。
「つまり……僕は間違ってなかったのか……!?」
どこかで物語の筋道が狂ったのだ。
これは予言の書かなにかに違いない。
もしかして……この世界そのものが物語の世界のなのか……!?
どちらにせよ、これはすごい本だ。
「はっはっは! 僕が主人公だったんだ! ほんものの! ジャスティスめ……よくも……!」
そうとわかれば、もはや怖いものはない。
僕が主人公ならば、この世界は僕のものだ。
ここに書かれている通りに僕の能力を駆使して、僕は世界を掌握する!
これはいわば僕の取り扱い説明書のようなものだ。
僕のスキルや成長の可能性などが、すべて描かれてるようなものなのだ。
◇
【ジャスティス視点】
「まあ……そう考えるだろうな……」
俺はアランを尾行して、やつの行動を見ていた。
どうやらあいつも本を読んだらしい。
翻訳されているとはどういうことだ……?
まあ、そのへんはわからないが、とにかくこれは好機だ。
あいつは自分が主人公だと思っている。
だが、それは俺も同じだ。
俺だって、追放勇者の主人公ではないが、俺自身の物語の主人公なのだ。
そしてこちらも追放勇者を読んでいる。
あれはアランの取り扱い説明書であると同時に、対策の本でもある。
俺はアランがどういった行動を繰り出してくるのか、予想がついている。
だって、追放勇者を読んだからな。
だけど、アランのほうはジャスティスがどういうことをするのか予測がつかないだろう。
なぜならあの本にかかれているジャスティスは、邪悪で雑魚だからだ。
いわゆるざまぁされる側のキャラだからな、当然だ。
だから、奴はきっと俺のことをなめている。
そこを突けば、俺は勝てる……!
そう確信して、俺はアランと戦うことを決めた。
もうあいつの好きにはさせない。
これは、俺の物語だ……!
「うおおおおおおおおおおおおおお!」
俺は後ろからアランに斬りかかる。
「っく……!?」
しかし、さすがは原作主人公だ。
簡単によけられてしまう。
「はっはっはジャスティス! お前から来てくれるとはね! 僕に勝てるとでも思ってるのか……!?」
「ああ、俺が勝つ……! だって俺が主人公だからな!」
「馬鹿め! お前は知らないだろうが、僕が主人公だ!」
「「うおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」」
俺たちは数時間にわたる死闘を繰り広げた。
その結果、勝ったのは俺だった。
「な、なぜだ……」
「それはお前が慢心したからだ。主人公っていうのはな、ただ流されてなるようなもんじゃないんだ。誰かに言われてなるものじゃなく、自分でつかみ取るものなんだよ……!」
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