第13話 【アラン側のお話】
その後も、僕は衛兵たちに追われ、街の中を逃げ回った。
だが、いくら敵が大勢いても、もはや僕の敵ではない。
僕は次々に、追手を斬り裂いていった。
「っふっふっふ……もう追手は来ないようだな……」
衛兵たちを屠った僕は、一人路地裏で立ちすくんでいた。
得も言われぬ万能感に浸る。
僕は、本当はこんなにすごい力を持っていたのか……!
剣さえあれば、僕もジャスティス並みに強くなれる……!
そう思ったときだった。
僕の内側から、なにか不思議な力がこみあげてくる。
「うわあああああああああああああ!!!!」
これは……!
今までにない感覚だ。
今まで荷物持ちとしてしかやってこなかった僕が、初めて戦闘を経験した。
それによって、なにかが起ころうとしている……!?
>条件を満たしたため、スキルレベルが上昇。
>アラン・ドランのスキル《アイテムボックス》が覚醒しました!
「なんだって……!?」
僕の脳内に、そんな言葉が響き渡る。
まるで直接頭の中に語り掛けられているようだ。
というか……僕が覚醒だって……!?
衛兵を倒したことによって、レベルでも上がったのだろうか。
「うわあああああああああ!!!!」
>スキル《アイテムボックス》が覚醒し、内容物が一部変化。
>アイテムボックスのサブスキル《熟成進化》が解放されました!
そんな音声とともに、アイテムボックスの中にあったアイテムが、何個か飛び出した。
僕の目の前に、見たこともないアイテムが三つ転がる。
「こ、これは……!?」
僕のアイテムボックスの中には、ジャスティスたちと集めたたくさんのレアドロップアイテムが入っていた。
でも、こんな謎のアイテムは、見たこともないし、アイテムボックスに入れた覚えもないぞ……!?
《熟成進化》って……中に入ってたアイテムが進化したってことなのか……!?
「とりあえず見てみよう……」
僕は、出てきた謎のアイテムを拾い上げて、鑑定してみる。
《禁呪の霊薬》
レア度 ★★★★★★★
説明【使用した人物の身体能力と魔力を飛躍的に高める。また、生命力と寿命も人間のそれを超える】
《禁じられた魔導書》
レア度 ★★★★★★★★
説明【超強力な魔法の使い方が書かれている書。中には禁術指定されているものも……】
《禁断の鎧》
レア度 ★★★★★★
説明【禍々しい鎧。着る者をあらゆる傷害から守る】
「おおおおおおおおおお!!!!」
僕は追われている身であることも忘れて、声を出して喜んでいた。
まさか僕のスキルが覚醒して、こんな最強アイテムを生み出すなんて……!
ただでさえ、勇者の剣という最強の武器があるというのに……これさえあれば……!
僕はもう、ジャスティスに負ける気がしなかった。
「なんだ、やっぱり僕はすごいんじゃないか……!」
僕のアイテムボックスのスキルは、ただのスキルじゃなかったんだ……!
くそ……ジャスティスたちめ、それなのに、僕をあんな風に追放するなんて……絶対に許せない。
「見ていろ! 見返してやるからな……! 今更僕のスキルの真価に気づいても、もう遅いんだからな……!」
僕は爪の跡がつくくらい、こぶしをぎゅっと握りしめた。
◆
アラン・ドランの現在のカルマ値 -500【殺人一回につき、50減少】
◆
「ふうむ……これがどう出るかじゃのう……。吉と出るか凶と出るか……」
神は天界で、腕を組み、顎髭を片手で引っ張りながら、難しい顔をしていた。
そこに天使が疑問に思って、問いかける。
「神様、アランはスキルを覚醒させましたけど……。これって原作ではどうなんです?」
神は小説のページをパラパラめくる。
「そうじゃの。本来であればアランは、メインヒロインと出会った後に、真の勇者の力に目覚める。そしてその後、ボスモンスターを倒し、スキルも覚醒……という流れじゃった……」
「なるほど、それだと、アランのカルマは高いままですね」
「うむ……しかし、今回は殺人をかなりしているからのう……。いくらスキルが覚醒しても、難しいかもしれんの……」
「それに、メインヒロインもボスモンスターも、やったのは全部ジャスティスですからね……。完全に入れ替わってますね……立場が」
カルマ値というのは、その後の人生に大きく左右する。
カルマというのは、すべて自分に返ってくるものなのだ。
それがこの世界においての法則だった。
つまり、カルマが高い値にあると、よきことが起こりやすい。
そして、低い値にあると、当然、ろくでもないことが起こる。
因果応報、自業自得、である。
「大きな力、というのは……それに伴う責任も大きいからのう。善人が使えば、大きな善を成す力でも、悪い状況にある者が使うと……どうなるかはわからん……」
「これが運名というやつなんですかねぇ……。でも、さすがはアラン、元主人公だけあって、この状況でも覚醒してくるんですねぇ」
「そうじゃのう。それにはわしも少し驚いた。まだ運命はアランを完全には見捨ててはおらんようじゃのう……」
「これがいい方向に向かうといいんですけどねぇ……」
どうにもアランの行く末に、不安を感じざるを得ない天使なのであった。
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