第16話 昔のように




 清田は風呂から上がると、冷凍庫から氷を取り出し、自室へと入って行った。

「ただいま帰りました」

 そう言ってから目覚まし時計の上に、美咲が用意していてくれた氷を置いた。

「そうか、目覚まし時計が届いてたんだよね。それで美咲も知ってたんだ」


 清田は包みからシラスとシングルモルトを取り出すと、時計の中のマルセリーノに声を掛けてみた。

「マルセリーノさん? 飲みませんか?」


「おう、帰ったか。ちょっと待ってや。今、風呂入ってるさかい」

「え? そんな小さい時計の中にお風呂までついてるんですか?」


 返事はなかったが、暫くしてマルセリーノが身体全体から湯気を上げて出てきた。


「何んやて? 風呂ってか? 小さいってか? お前なぁ、こんな小さい時計や言うたけど、中はめっちゃ広いねんで。 このままの大きさやったらワイ、寝るだけしかでけへんやろ。ちゃんと異次元に繋がって、めっちゃ広いねんからな」

「すごい時計ですね」

「まぁ、地球から見たらそうかも知らんけど、ワイらの星から言うたら当たり前のことや。それより飲もうや」

「はい」

 そう言いながら清田はシラスとシングルモルトを差し出した。

「おう、お前にしては気が効くやないかい」

「いえ、美咲ちゃんが用意してくれてたんです」

「どうせ、そんな事やろうと思たわ」

「すみません」

「まぁええ、飲もかい」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る