第25話成人記念パーティー
10日後。
オルシャー伯爵邸の見事な庭にパーティー会場が設営され、アルフォンス・フォン・オルシャー伯爵の長女、エリシャ嬢の成人祝いのパーティーが始まった。
内心かなり緊張してるだろうに、それを全く感じさせない笑顔で来賓客たちと談笑を交わしていた。
「エリシャ様、お綺麗です」
ポーシャがうっとりと見慣れている。
たぶん今日のためだけに仕立てたのであろうドレスは、エリシャの子供らしい可愛らしさと大人らしい魅力を両立させる素晴らしい出来栄えだ。
エリシャに近い年齢の男から、かなり歳上の男まで――メイドさんに聞いた話によると、騎士爵家から侯爵家までの婚約者のいない男がエリシャと……さらにはオルシャー伯爵家との繋がりを求めて、いろいろなプレゼントを贈っている。
「ま、確かにエリシャは綺麗だけどさ。ポーシャも、それにサエちゃんだってなかなか似合ってて可愛いぞ?」
ポーシャとサエちゃんは、日本から持ち込んだメイド服を着て今日のイベントに臨んでいる。
いちおう屋台を手伝ってくれているみんなの分も用意だけはしてきたけど、今日が初お披露目だ。
メイド服はサエちゃんと選んだもので、いかがわしいデザインのものではなくオーセンティックな上質なものを選んだ。
サエちゃんもちょっと援助してくれたけど、メイド服や他の買い物をいろいろとしたらオレの貯金はもうすっからかん。このお披露目会が終わったらマジメに金策をしないとヤバい。
「たーくん、そろそろだよ」
「お、分かった」
庭での挨拶や軽い飲み物を楽しみながらの交流の時間がそろそろ終わり、このあとは大広間に移動して立食パーティーが始まる。
ここの庭は確かに素晴らしいんだけど今は夏。パーティーは2時間から3時間はかかるから、さすがにずっと表にいるのは暑くてたまらないもんな。
「それじゃ、出しますか。……よいしょっと」
日本から用意してきた電動かき氷機は、特注の魔道具ということにしておくことにしたよ。
手動でいちいち作っていたら貴族の人たちを待たせることになっちゃうもんね。待つことに慣れてなさそうな人たちだし、ここはもう仕方ない。
それと、出した物はあと2つ。約束していた美術品。
「――ははは。確かにエリシャ嬢は美しいが、所詮は伯爵家。見飽きた催しばかりで飽き飽きしますな」
「まさに。しかし我ら侯爵家と比べるのも気の毒という……もの……です……ぞ」
「む、どうされたかな? ……っ! な、なんだあれは!? 宝石のような輝きではないか!」
額の汗を拭い、腹の肉を揺らしながら入ってきた2人が絶句する。
もちろん、オレの用意した美術品を目にしてだ。
オルシャー伯爵も、少し離れたところでその様子をみてニヤリとしているな。
度肝を抜いて、してやったりってとこかな。
大広間の中央には、氷の彫像。
今にもブレスを吐かんとする威容たっぷりなドラゴンと、翼を羽ばたかせ飛び立つ神々しいフェニックスの像に、全ての来賓客が目を奪われていた。
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