第20話 シンの矢は魔を祓う?
僕が元の世界でやってた魔除けの鳴弦の儀式の様に、念を込めてから射った矢はとんでもない事になってしまった。
的に刺さるどころか、木っ端微塵にしてしまったんだ。
僕が無意識に唱えた祝詞のせいだろうか。
異世界でも祝詞の効果があるのかな?
魔法に詳しいフォーカス様曰くは、僕の放つ矢にはこの世界には無い魔法のような力を感じるらしい。
それって、やっぱり僕が儀式としてやってきた弓引きの名残なんだろうか。
何だか僕がなぜこの世界に飛んできた、いや、飛ばされた理由がそこら辺にあるんじゃないかと思い始めた。
フォーカス様が手に取った、さっきまで的だった物は僕には単なる破片にしか見えなかった。
いくつかの破片を丹念に調べていたフォーカス様は、僕と兵士長を見ると言った。
「魔法士に見てもらうともっと細かい事が分かるかもしれないが、私が見てもある程度のことは知れる。
この破片に残っている力は、清浄の魔法に似た力がかなり強くなったものを感じる。
実際、シンが弓を弾き鳴らした際に感じた鋭い気配は、ピリピリと身体に纏わりついた。
あれがひとつにまとまって一点集中したら、この様な破壊に結びつくかもしれない。
あとは魔神信仰の夜の国にどの程度効き目があるかだが、実際やってみないことには分からないだろうな。」
そう言うとフォーカス様は僕のフーガに目をやり、面白そうな顔をして言った。
「とにかく戦場では今の様に、じっくり矢を射かけることばかりでは無い。
フーガに乗って自由自在に射掛ける事が出来るよう鍛錬しなさい。
…そうでなくては、私もシンが気になって戦に集中出来ないだろうからな?」
そう言うと、フォーカス様は僕の手を取って口づけた!
僕は急にフォーカス様から甘い空気が飛んできて、顔も握られた手も熱くなってしまった。
赤くなってないといいけど…。最近のフォーカス様は無表情をやめたみたいで僕はちょっぴり困っちゃうんだ。
あれ?兵士長はどこ向いてるの?僕たちだけにしないでください!こっち見て!フォーカス様を止めて!
それから僕はカークさんの指導で馬上から矢を射掛ける訓練に勤しんだ。
魔を祓うイメージで射ったり、祝詞を唱えながら射ったりと、色々試した。
段々と効果がありそうな僕の矢のメソッドが決まってくる頃には、身体が重く感じられて、身体から力が抜けていくように思えた。
「シンっ!」
遠くからフォーカス様が馬で駆けてくるぼんやりした姿を瞼に残して、僕は意識を手放した。
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