ちゃぶ台と羊皮紙と魔法陣

紀之介

召喚

「かーんせーい」


 はしゃぐ香奈さんの前には、ちゃぶ台。


 その上の羊皮紙には、魔方陣が描いてありました。


「これで、魔物が召喚出来るのぉ」


 ちゃぶ台の反対側に英里華さんが座ります。


「へー」


「怪しい古書店で見つけた、魔導書に書いてあった」


「で、発動条件は?」


「あ・な・た・の・血」


「─ 人の血がいるって事?」


「そう♡」


 黒いオーラを発する英里華さん。


「── 別に、誰のでも良いんだよね?」


 ゆっくりと立ち上がります。


「ちょっと待ってて」


「え!?!」


「台所から、包丁取ってくる」


「ど、どうして?!」


「だって、血がいるんでしょ?」


 身の危険を感じた香奈さんは、その場から ジリジリと後ずさりました。


「うん。じょーだん だ・か・ら」


「…」


「ね? ね?? ね???」


「私、そう言う冗談は 嫌いな人なの」


「香奈ちゃんが悪かった! だから座って!?」


----------


「で、本当は──」


 ちゃぶ台の正面の席に座り直す英里華さん。


「…何が必要な訳?」


「『ウショドマョの書』の呪文」


「そんな本、何処にあるの?」


「何と、探したらありましたぁ」


 香奈さんが、薄汚れた本を、ちゃぶ台の下から取り出します。


「じゃーん」


「うそ?」


「香奈ちゃんの蔵書も、捨てたもんじゃない☆」


「あの魔窟から…良く 探せ出せたもんだ」


「汚部屋だから、苦労したー」


「じゃあ、片付けなさいよ」


「今回の発掘で、よりカオスが拡大したから、むーりーー」


----------


「はい」


 ちゃぶ台の正面から、身を乗り出す香奈さん


 英里華さんが、顔を顰めます。


「─ なに?」


「香奈ちゃんを、褒めて」


「えらい、エライ」


「もう少し、ちゃんと!」


「何か、ご褒美が欲しいって事?」


「うん♡」


 上目遣いの香奈さんの頭に、英里華さんが手を伸ばします。


「じゃあ、頭を撫でてあげよう」


「えー」


「…何か、不満があるの?」


「し、仕方ないなぁ♪」

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