取り敢えず、抱かせてくれ その3

「いいか……?」


「えぇ、いいわ」


彼女が俺が思うのと同じくらい心地よくなっているか、男としては確認しておきたいものだ。


だからすっかり汗ばんだ彼女がそう返した時、俺はほっとしたと同時に、もう少し攻め立てても大丈夫かと意地の悪い考えが頭を過ぎった。


ずっとこうして抱き合っていたい。


自分とは違う柔らかな彼女を胸に抱きながらそんなことを思う。


「はっ、あなた……今日は激しいのね」


「そうか?」


「いつもよりも少し乱暴で、熱っぽいわ」


「すまん、痛かったか?」


やはりというか、俺がいつもよりも余裕がないことは彼女にはお見通しのようだった。


「ううん、少し荒っぽい方があなたを感じられて……幸せよ」


目を逸らしはにかんだ表情でそんなことを言われたらどう思うのか、彼女は考えたことはあるのだろうか。


「ほぉ……じゃあもう少し激しくしても問題ないな?」


「……えぇ、もう少し、だけなら」


思考が低下しているのか彼女はふわりと花が咲いたように甘く笑った。


あぁ、いいな。


この艶っぽい笑顔を知っているのは俺だけなんだ。


甘く強請る声も、蠱惑的な仕草も、上がる息も、何もかも全て知っているのは、俺だけ。


「好き、好きよ、あなた。大好き」


「あぁ、俺もだよ」


微笑みあって俺たちは再び口付ける。


彼女は先程よりも積極的に舌を絡めてきた。


首に手を回し、強く俺を求めている。


俺もそれに応えるように頭に手を回して強く抱き締めた。




獣のように互いを貪り食う俺たちは、傍から見れば滑稽なものなのかもしれない。


肉欲からの出会いなら、特に。


知識に乏しかった彼女を大人の世界に導いて、考える時間を与えずに身体に隅々まで教え込み、夢中にさせたのは他ならぬ俺だ。


彼女を暴くのは俺の支配欲と独占欲を満たしたが、心は果たして満たされているのだろうか。


彼女を繋ぎ止めたくて、俺は彼女を頻繁に抱くのではないだろうか。


疲れ果てて気絶し眠る彼女を引き寄せ髪をすきながら、ふと虚しさが俺を覆う。


彼女を手にすることは出来たはずなのに、不安が付き纏って仕方なかった。

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俺と彼女の甘い時間〜愛のない○ッチは禁止です!〜 天野甘味 @girl_end

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