波
食連星
第1話
「君は時が満ちたら花開くよ.」
「貴方は掬い上げてくれる人を待つの?
救われないかもしれないのに.」
波が寄せる記憶は,
淡く溶けて漂う.
「かんちゃーん.
もう直ぐ船が付くよー!!!
危ないから上がりなっ.」
もうそんな時間か.
「ありがとー.」
スクリューに巻き込まれて,
ミンチになったら…
魚に食べられて,
一緒に同化して,
海を泳ぎ続けられるんだろうか.
いや,待って.
その前に
❝❞痛い❝❞
が待ってるね.
ちょっと,無理かな…
あちゃっ,
もう船着いちゃったか.
1週間に1回船着き場は賑わう.
食料品と,いつ頼んだか分からない通販と,
メンドクサイ観光客と…
あんま来ない観光客に
島中,湧き立つ.
もう,こんなとこいられんって人は,
翌日,学生と一緒に朝早く戻ってく.
何も無いから.
半日あれば,島一週とか余裕だし.
『カシャっ』
背後から音がする.
風景撮りに来た人か.
今日何処泊まるんだろ.
「良い写真撮れそうですかー?」
本土の方見ていたけど,
島の方に向かって泳ぐ.
返事の代わりに,
シャッター音が戻って来た.
無口タイプの人か.
こだわり強い人とかかな.
こりゃ長持ちしないタイプか.
がんがん来る島人に
音を上げるかもね.
学生を乗せる船は
よく揺れる.
早目に朝食べるか,
食べずに出た方がいいよって
教えてやるか.
ビーサンどこ置いたっけ.
そんなに泳いだつもりないから,
波にさらわれてる訳がない.
そろそろ足がつくね.
いい波でした.
「水着着ないんだね.」
軽くセクハラタイプの人か.
いるいる.
色んなタイプの人が.
「えぇ.
それが何か.
まだ気にしなくてもいい位なんで.
前か後ろか気にする位になったら
気にしますけど.
どんな写真撮ったのか,
見られますか?」
「デジタルじゃないんだよ.
見られない.」
へ~.
今時珍しい.
こだわり強いタイプの人かな.
撮ったの直ぐ確認出来ないのって,
かなり不便じゃない?
「よく見てますよ.」
「えっ?
俺の作品を?」
「え!?
あなたがどなたかで
どんな作品出してるなんて
全く
…知りませんよ.
撮影される方
よく来られるんです.
かなり見てきてるから,
良し悪し分かると思いますよって
意味です.」
「あぁ…
そういう事.
撮っていい?」
「高いですよ.」
意地悪く笑ってみると,
「出世払いでいい?」
返ってくる.
駄目に決まってんでしょ.
「出世してからで.」
「厳しいね.」
そうなんだ.
世の中も厳しいし,
私も厳しいのだ.
「早めに宿へ,どうぞ.」
キョロキョロして,
ビーサンへ向かうと
後ろからシャッター音が聞こえた.
振り返ると,
「何撮ったと思う?」
意地悪く笑われた.
「デジタルじゃないんだよね.
見られないんだ.」
と続けた.
「あっそう.」
ビーサン履いて歩く.
メンドクサイ撮影者が来てる.
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます