20円と粗大ゴミ

@eight-p

20円と粗大ゴミ

見知らぬ番号から着信があった。


市内の固定電話。

こういうときはまずネットで検索してみることにしている。しかし特に何も出てこない。

そこで、勇気を出して折り返し電話をしてみた。


推定五十代の男性が出たが、早口で何を言っているか聞き取れなかった。お名前は?と聞かれて一瞬躊躇したけれど、思わず名乗る。


ああ、20円のことで電話しました。

20円?

今日粗大ゴミ出されましたよね。


確かに今日、役所の粗大ゴミ係に粗大ゴミを持って行ってもらう予約をしてあった。指定のゴミ袋に入るだけ入れて出す。限界まで入れて袋の口を括ることができず、ガムテープで封をした。

それが良くなったか。

でも20円?


すると、相手はこう言った。

足りなかったんですよ、料金が。

消費税上がったんで。

何年か前に買った指定袋。その頃より消費税が上がって、その分が足りないらしい。それが20円。

そういうことか!!!


どうしたらいいですか?


次の粗大ゴミ収集を予約して、その時に20円プラスしたシールを貼ってください、と。

しかし今の私にはまだ粗大ゴミを出すかどうか日にちまでは決められないと咄嗟に思った。

いや、捨てたいものはあるけれど、今回の粗大ゴミだって数年前の袋を使ってるということはお察しである。やっとこさ重い腰をあげたのだ。


他の方法はないですか?

市役所の8階の担当部署に払いに来てもらうか、20円のシールを郵送で送ってください。


うーん、どう考えても20円に見合う行動ではない。


私は少し迷ってから、じゃあ次の収集の時に20円プラスしますと答えた。

いつにしますか?

来週の水曜にしておきましょうか。とりあえず。もしそこまでに準備できないなら前日までなら電話で延期してもらえますよ。


しかし延期であって予定が無くなるわけではない。


時は年末。

断捨離したいものはたくさんある。

強制的に期限を決めてもらえたと言うことにしてみるかと腹を括る。分かりました。よろしくお願いします。


ここまでの人件費、20円はとっくに超えてるだろう。しかしさすがのお役所、もういいですよ、とは一生ならないはず。次の水曜までに家の中もその負債もすっきりしよう。

そんな決意の師走の朝。

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