第49話
「な……んで……」
サーシャは呆然と立ち尽くしている。
「あぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああ!私の研究素体よぉ!」
そして、アルミデウス大司教はキーネだった化け物を見て半狂乱となって叫び声を上げる。……タイミング良すぎなんだよな。
「『アクセル』『マリオネット』」
僕はキーネだった化け物の横腹を思いっきり蹴り飛ばし、刀を構えてそれを追う。
「しっ」
僕の一太刀。
それは確実にキーネだった化け物へと当たった。
しかし、僕の一太刀はボロボロの、ほとんど皮がえぐれて肉だけとなったその体に通らなかった。
かった……。いくらなんでも固すぎるだろう……。
「……っ」
キーネだった化け物が無造作にその小腸が渦巻く何かわからないもの僕に向かって振るう。
「ちっ」
僕はそれをギリギリのところで回避する。早すぎるよ?
もうちょい手加減してほしいな。
これは負けイベントだ。
ゲームだと呆然としているサーシャを横目に勇者たちが戦い、そのまま敗北する。そして、それと同じタイミングでクエストに同行していた終焉騎士が駆けつけてくれて、そのままこのキーネだった化け物を倒す、というイベントになっている。
ゲームだと負けた瞬間に終焉騎士が、ミネルバが駆けつけてくれるのだけど……現実世界だとそういうわけにはいかない。
……僕がなんとか時間を稼がないといけないのだ……。普通に無理ゲーだろこれ。
クソッ……もうちょっと勇者たちを頼るべきだったか……いや、所詮結果論か。僕は吸血鬼として暴れて、サーシャを殺すという結末を辿るという予想だったのだから。
「……くっ」
マリオネットに無理やり動かされた僕と、余裕綽々と言った様子でその圧倒的な力を振るうキーネだった化け物がぶつかり合う。
本当にギリギリだ。
マリオネットで体を本来の可動域なんて無視して無理やり動かしていることでようやく回避しているような状態だ。
「にゅ!?」
いきなり飛んできた腕。
僕の方へと飛んできた腕、足の代わりを果たしている腕がまるで蹴りをするかのように僕に向かってくる。
さっきまで小腸が渦巻くものでしか攻撃してこなかったから完全に油断していた。
無様な形で強制的に回避した僕の体は……どうしようもないほどに無防備だった。
そんな僕の心臓に向かって伸ばされる小腸が渦巻くもの。
……なんとか避けて……いや、無理だ。……心臓の位置を無理やりズラす?僕が対処の方法を考えている時だった。
一筋の闇が走る。
「ダメ」
僕の命を奪わんとしていたものはあっさりと呑み込まれた。
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