第47話
「え……」
僕は突然の蹂躙劇に驚きの声を上げる。
目の前を。
僕の目の前を一筋の闇が走り、全てを蹂躙してみせた。
禍々しい腕も、触手の化け物も。
全てが一様に。
「サーシャ?」
僕は驚愕に目を見開く。……え?マジで成功したの?完全に失敗したと思ったんだけど。
今のサーシャがさっきまでのサーシャとは何もかもが違っていた。
触手の化け物の手によって溶かされていた服の代わりに漆黒のドレスを身にまとい、十字架を模した白銀の長剣の代わりに、十字架を模した漆黒の長剣を手にしている。
そして、何よりも変貌しているのがその気配だ。
圧倒的なまでの気配。
さっきまでのなよなよとした気配など無い、一流の戦士に相応しい気配をその身に纏っていた。
「大丈夫。……私が必ずアウゼス君を守るから」
普段。
普段は長い前髪のせいで見えない黒色の瞳が、長い前髪を上げるカチューシャをつけていることによって今は見えている。
はっきりと見えるようになったその黒色の瞳には強い光が宿っている。
「あぁ……」
アルミデウス大司教が目の前で引き起こされた蹂躙劇を前に悲痛な声を漏らす。
「妬ましい……その力がッ!あぁ!!!何故何故何故何故何故ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえええええええええええええええええええええええええええ!!!」
狂人は狂人らしく無様な叫び声を上げて喚き散らす。
「アァ!!!」
そしてアルミデウス大司教は狂乱の果てに禍々しい腕を再度出現させる。その数はさっきまでの一本ではなく、二本。
─────だが、そんなのもの。何の意味もなかった。
サーシャの力は圧倒的だった。
「無駄です。私の闇は全てを飲み込ます」
サーシャが大地を蹴る。
距離。
サーシャと二本の禍々しい腕の間にあった距離は闇へと飲まれ、距離という概念そのものをサーシャは無視した。
まるで僕の転雷神のようにサーシャは一瞬で距離を詰めて、その長剣を振るう。
それだけで二本の禍々しい腕は闇へと飲まれた。
「ば……かな。馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿なァァァァァァァアアアアア!!!」
自身の力である二本の禍々しい腕が一瞬で闇へと飲み込まれたアルミデウス大司教は半狂乱となって叫ぶ。
これだ。これこそがサーシャをチートたらしめている反則固有スキル。
あらかたの物を闇へと飲み込んでしまうサーシャの闇。闇に飲み込まれないものは闇に飲まれないだけの強大な意思、もしくは闇。他には単純な力か。
最強とは言わぬが、それでもほとんどの物を飲み込んでしまうサーシャの固有スキルは反則そのものだろう。
「終わりです」
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