第32話

「ふむ。それで何処なのだ?」


 なんでこんなことに……。

 僕は終焉騎士としてのガッチリとした鎧を着込み、腰に剣を差した状態の。

 戦闘準備完璧で、無表情ながら少しの喜びと圧倒的すぎるヤル気をみなぎらせたミネルバを見て僕は頭を抱えたくなる。

 

「あぁ……はい。そう、だね」

 

 僕はミネルバの言葉に対して曖昧な言葉を告げる。


 ミネルバがついてきたのは完全に予想外だ。


 当初の予定ではサーシャとふたりきりで行くつもりだった。

 闇魔法に分類される精神干渉魔法、幻術魔法を駆使してサーシャを騙しながら吸血鬼パワー全快で敵をなぎ払い、ちゃんと最後にサーシャ覚醒イベも踏んでおこうとしたのだが……。


 しかし、ミネルバがついてきているんじゃそういうわけにもいかない。

 ミネルバにどんな闇魔法をかけたとしても完全に騙せる気がしない。流石にミネルバの前で吸血鬼パワー全快で戦うのは不味い。

 こちらの手札を終焉騎士団に見られたくはない。流石に国外酔街とかでアーレスと共に戦ったときのように、手札を一切見せず、高いステータスによるゴリ押すという戦い方で行けるとは思えない。

 ……まぁミネルバは強いし、僕が吸血鬼として戦わなくても……大丈夫、かな?……大丈夫と信じたいなぁ。


「こっちだよ」

 

 僕は黒ずくめの男たち、悪魔崇拝者たちの拠点の一つに向かって歩く。

 今、向かっている拠点にサーシャの恩人、攫われた終焉騎士の一人が囚われている。

 拠点の場所はゲームに出てくるので最初から知っていた。


 僕だけじゃ入れないから潜入出来ていないんだけどね。

 どうやら悪魔崇拝者たちは吸血鬼をこれ以上ないくらいに警戒しているらしくて、ガチガチの吸血鬼対策をしてきているのだ。

 拠点の入り口に張り巡らされた聖なる力。

 そこを吸血鬼状態で通れば無事では済まないし、人間状態で通ったら監視している人間に見つかって即殺されてしまう。

 吸血鬼に対する対策はこんなものじゃない。


 吸血鬼には実は意味のわからない弱点がちょいちょい存在する。聖なる力や、銀とか十字架とは別に。

 辛いものが食べれなかったり、刺激臭には弱かったり。

 別ににんにくとか流れる水とか全然平気なんだけどね。


 吸血鬼の意味わからない弱点全てを突くように様々な形で仕掛けが施されているのだ。


「ここ、だよ」


 僕は一つの大きな岩の前に立ち止まる。


「岩……?別に珍しくは……」

 

 ここは森の中。何故か岩がゴロゴロ転がっている森の中。

 別に大きな岩が置いてあることくらい不思議なことじゃない。


「ここに地下に通じる道があるんだよ。壊して?」

 

「うむ」

 

 ミネルバが拳を構え、振るった。

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