第14話

「終焉騎士のお兄ちゃんです!」

 

 僕の隣を歩いていたパルちゃんが喜びの表情を見せ、アーレスへと抱きつく。


「くっさいです!」

 

 そしてすぐさま僕の元へと戻ってくる。

 いつぞやもこんな光景を見たぞ。僕は。


「全くひでぇな」

 

 僕とパルちゃんとニーナとガンクスでご飯をもりもりと食べていた時、アーレスが僕らの元に近づいてきたのだ。


「隣良いか?」

 

 アーレスは一応確認のための質問を行い、その答えも聞かずにさも当たり前のように僕の隣に座った。……答えを聞く気がないのなら最初から聞いてくるなや。ボケェ。


「それで?最近はどうだ?パルシア」


「元気です!」

 

 パルちゃんは元気よく頷いた。

 

「お母さんはわからないです!……最近は国外酔街に帰れていないのです!」


「えっ!?」

 

 僕はパルちゃんの言葉に目を見開く。


「国外酔街!?パルちゃんってば国外酔街出身だったの!?」


 僕は驚愕に、久しぶりに大きな声を上げる。ここ一番の驚きだ。

 

「はいです!」

 

「……」

 

 僕は絶句する。

 あんな地獄で成長したの……?あそこは確実にこの世の地獄だぞ。


 国外酔街。

 奴隷制度や冒険者制度。それはこの世界に、人間が作り出した救済措置だ。

 この世界ではアンデッドの生息エリアと人間の生息エリアに分けられていて、アンデッドと人間は常に生息エリアの奪い合いをしてきた。

 アンデッドから奪った生息エリアに移民を送り、村を作り町を作り国を作る。

 アンデッドから生息エリアを奪われればそこに住んでいた人たちは住む場所を失う。子供は基本的に受け入れてもらえるが、大人は受け入れられ辛い。

 そのための奴隷制度と冒険者制度。

 力強く、鍛えていない状態だったら女性よりも強い男は冒険者としてアンデッドとの戦いに駆り出され、そして命を落とす。アンデッドと戦えない弱い女性は性奴隷となり、男の股の上で踊ることになる。まぁ強い女が冒険者になること場合もあれば、弱い男が性奴隷になることもあるけど。ちなみに奴隷なんて性奴隷、実験体。この二種類しかない。

 そんな奴隷制度と冒険者制度。

 これだけでも十分にひどい制度だが、そんなものより遥かにひどいのがこの世界にはある。


 それが国外酔街だ。

 

 国外酔街。この世界の悪。醜さ。

 奴隷商人だって、奴隷を買う人間だって無限にいるわけじゃない。

 冒険者ギルドだってどこにでもあるわけじゃない。冒険者への依頼がそんなに無限にあるわけじゃない。

 奴隷にも、冒険者にも慣れなかった。

 そんな人間。

 そんな哀れな人間は国外酔街へと辿り着くのだ。

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