第12話
解放された化け物。
それはここにいるものへと殺意を向ける。
触手が動く。
「ふむ」
解放された化け物が振るった触手。
それを平然と鷲掴みにしたガンジスが首を傾げる。
「不思議だ。何も感じられない。気配も……。本当に吸血鬼の眷属なのか?」
「いや。それは間違いないと思うよ」
僕は立ち上がり化け物の方へと近づいていく。
そして、化け物に向けて手をのばす。
「ほいさ」
僕は軽い力で殴り飛ばした。
「そのまま転がっていろ」
ピタリ。
立ち上がろうと体を蠢かせていた化け物がピタリと行動を止める。
「ね?こいつは吸血鬼に逆らえないようになっている。それが吸血鬼の眷属である証拠。王たる吸血鬼に眷属は逆らえないだよ。それがたとえ自分を作り出した吸血鬼以外の吸血鬼であってもね」
まぁこいつは馬鹿なのか、相手が血を操っているところを直接その目で確かめない限りその相手を吸血鬼とは認識しないようだが。……おかげで僕に向かって一撃攻撃を振るってきやがった。
「ふむ……なるほどな」
「まぁそんなことはどうでもいいんだよ。これは何?出来れば隠さず教えてほしいんだけど」
僕はベルモンドに向かって、上から見下ろすながら言葉を告げる。
「……そんなに威圧するな。はっきりと言うのであれば我々も詳しく無いというのが現状だ。……私よりバング殿のほうが詳しいだろう」
ベルモンドは腕を組み、無言を保っているバングへと視線を向ける。
「……ふむ」
バングはゆっくりと口を開く。
「今から一ヶ月ほど前か。我々終焉騎士団がこやつらに襲われた。……四匹ほどいた。こやつらに我ら終焉騎士団の一人が攫われた。……我が同胞を救うため……もし我が同胞を殺しているのなら報復のため。我らはこいつらを追っているのだ」
数匹……。これに?
ゲームだと終焉騎士団は黒尽くめのローブたち、おそらく悪魔崇拝者だと思われる者に襲われていたはずだ。
……まるでわからないな。
「情報を集めた結果。あれらが潜んでいる場所がここだった。それだけの話よ。我らも何も知らぬ」
「つい最近の殺人事件もこいつらの仕業だろう」
「……なるほど」
僕は彼らの話を聞いて頷く。
「つまり何もわからないということか」
「あぁ」
僕の言葉にバングは頷く。
「して。お前は何を知っている?」
バングは僕を睨みつける。
「何も知らないよ。何か知っていたらここに来ていないし、僕を監視している人に情報をプレゼントしているよ。いつもどおりにね」
僕はそんな視線を受け流す。
「何もわからないなら良いや。僕も個人的に動いてみる。何かわかったら連絡するよ」
僕は一方的にそう告げ、この場を後にした。転雷神を使えば一瞬だ。
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