第5話

 終焉騎士。

 真っ黒な鎧を身につける唯一の騎士団だ。

 唯一の鎧を纏っているからこそ、その存在は非常にわかりやすい。

 

「おぉ」

 

 漆黒の馬に乗った終焉騎士の存在は一目見て分かる。

 王都へ入る城門から王城の門までと続く長く最も整備された道を終焉騎士の一行は歩いていた。

 道を歩いているの終焉騎士の数は全部で30名ほど。

 終焉騎士は全員で50名ほどいる。

 そして、僕の優秀な感知にはこの王都に私服姿で紛れている20名ほどの終焉騎士の存在を確認している。

 終焉騎士とは一応の友好関係は築いているのだが、完璧じゃない。突然襲いかかってくるかもしれない。なので、終焉騎士がいる間は吸血鬼としての力は封印していないのだ。

 つい咄嗟に吸血鬼パワーを使っちゃうことがあって、正体がバレるようなことに繋がりかねないから避けているんだけど……。

 まぁ仕方ない。終焉騎士はマジでやべぇ奴らが多いのだ。


「……あれ?私を送ってくださった終焉騎士の人がいませんね」


「私の知っている終焉騎士の人もいないです」

 

 罅隙とパルちゃんは終焉騎士の面々を見てボソリと呟く。

 

「そうなの?」


「うん。いないのかなです」


「おかしいですね。一緒に王都に来たはずなのですか」

 

「ニーナが知っている終焉騎士はいるのか?」


「うん。いるよ。ほら。一番前の人」

 

 ニーナは道を歩く終焉騎士の先頭を歩く老人を指差す。

 ……騎士団長かよ。

 ニーナが指さした相手は終焉騎士団の騎士団長だった。

 長き人生をアンデッドの戦いに費やしてきた傑物で、圧倒的な力を持っているガンジスの次に強い人間であると言えるだろう。

 ガンジス程の化け物具合を持っているわけではないが、それでもとんでもない強さを持っている。

 そんな騎士団長の横には僕の最初のパートナーである金髪の終焉騎士の女性の姿もあった。


「よぉ。嬢ちゃんたち。今暇かい?」

 

 終焉騎士の集団を見ていた僕らに近づく怪しい男が一人。

 そんな男を見て、罅隙は目を見開き、パルちゃんは笑顔を見せる。


「しゅ、むぐっ」

 

 僕は男のこと終焉騎士だと呼びそうになったパルちゃんの口を封じる。

 

「どうも」

 

 僕は男に笑顔を見せる。


「なっ!?」

 

 男は僕の姿を見て完全に固まる。


「どうしたんですか?話しなら奥で聞きますよ?」

 

 僕はそう告げ、男の返事など無視して歩き出す。


「言ったら王都の連中を皆殺しにする。確実にパルちゃんは殺す。覚えておけ」

 

 僕は呆然と立っている男とすれ違う時、男にだけ聞こえるような声で囁き、誰もいなさそうな裏路地に向かった。

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