第22話

「我々は剣。神々の剣。神々の代理人なり」

 

 男はゆっくりと歩いて近づいてくる。

 男の周りに立つ先生も騎士たちも男が纏う圧倒的な圧力を前に恐れおののき、無意識のうちに離れていく。

 なんで、この男が……なんでガンジスがこんなところに。


「化け物共を……不死者共を……殺す剣なり」

 

 ガンジスは収納魔法から銀で出来た無骨な剣を二本を取り出す。

 不死者を殺す神々の加護を受けた聖なる銀の剣。

 ……神々の加護には様々な種類の加護があり、ゲームで優秀な加護を武器に付与するのに酷く苦労したもんだ。


「誰だ……?」

 

 僕の隣に立つ先生は疑問符を浮かべる。

 まぁ、教会最強戦力であるガンジスの存在を知っているものは少ないだろう。

 僕というイレギュラーがいなければ今ここにガンジスはいないだろう。


「愚かなる化け物よ、神のもとに還るが良い」

 

 砂埃が舞い、銀閃が走る。

 僕が、先生が、僕たちがいくら斬りかかっても傷一つつかなかった触手が天を舞い、ワームの体が一瞬でいくつもの肉塊へと変貌する。

 

「よくも私が到着するまでの時間を稼ぎました。いい子は好きですよ?」

 

 ガンジスは胡散臭い笑顔を浮かべたまま僕の方へと近づいてくる。

 その手にはしっかりと銀剣が握られている。


「ありがとうございます。強い人」

 

 僕はニコリと笑顔を浮かべ─────

 腕が、足が吹き飛び、体が両断される。


「どういうつもりでしょうか?」

 

 だが、その程度すぐに再生する。

 ヴァンパイアは心臓を撃ち抜かれない限り死ぬことはない。負けることはない。

 僕は蠢く自らの血に手を伸ばす。

 

「なぁに。不死者に対する当然の行いだとも」

 

 僕の首に銀剣が、ガンジスの眉間に銃口が。

 ガンジスは剣を構え、僕は銃を握る。


「ははは、やるかい?」


「……お前ような不死者を殺すこと我が使命。それにお前はあまりにも危険すぎる」


 僕とガンジスは睨み合う。


「無理だね。君は僕を殺す許可をもらえていない。それになんだ?ここにいる人たちを巻き込むつもりかい?」


「我は神の代理人にしてユダなり。貴様を殺すためならすべてを犠牲にしてみせよう」


「そうかい。でも僕は今の君に負けるつもりはないよ?幾重にも封印が施された君にはね」

 

 ガンジスは基本的に教会より自らの力を制限されている。

 教会から許可が降りない限り、思う存分戦うことが出来ない。


「……」

 

 ガンジスは無言で銀剣を下げ、僕に背中を向ける。


「はぁー」

 

 僕は大きくため息をつき、少しばかり特殊な拳銃を落とす。

 拳銃は僕の血に呑まれる。

 それと同時に僕はこの場にいた全員にかけていた精神干渉魔法を解除する。

 まったく。なんでワームよりも遥かに厄介な化け物と相対しなくちゃいけないんだ。

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