第20話
雨がザーザーと降ってきそうなどんよりとした曇り空の下を僕達は歩く。
「私の家は領地を持たない子爵家なのよね」
「子爵家ですか!お貴族様です!すごいです!」
道中僕達は雑談をしながら進んでいた。
木などの遮蔽物がない中、先生は魔法を駆使して頑張って姿を隠しながら尾行してきていた。
「別にそんなにすごくはないわよ。確かに一般の人よりお金はもらえているけど、その分苦労も多いし。私の家は王都に屋敷を構えているから、パーティーなどに呼ばれたときにそれなりのお金を投じて衣装を買う必要があるからね。マナーとか多すぎて学ぶのがうんざりするわ」
「まったくもって同意する」
ニーナと同じく子爵家の長男であるガンクスがわかるわぁー的な感じでうなずく。
今はそれぞれの身の上話に盛り上がっていた。
「パルちゃんの家はどんなのなの?」
僕はなんとなくパルちゃんにも話を振る。
「はい!私の場合は父親がギャンブルで借金を作った挙げ句蒸発しちゃったこともあって、お母さんが毎夜毎夜に水系のお仕事でお金を……」
「いいから!」
僕はパルちゃんの口を塞ぐ。
聞いたことをひどく後悔した。
そんな元気よく話すことじゃないよ!?
「ごめんね!そ、そんなに苦労しているなんて……!私なんかが苦労しているなんて言っちゃって!」
その話を聞いたニーナが頭を下げる。
「大丈夫です!」
パルちゃんは元気よく答える。
……パルちゃんが一番心が強いのかも知れない。
「アウゼスの家はどんな感じなんだ?」
「ん?僕?」
「ん?あ、あぁ。そうだ」
「パルちゃんより遥かにひどいけど聞く?」
「……いや、いいわ」
ガンクスは少し顔を青くして引き下がった。
……いったい僕の両親はどんな人なのだろうか?昔探してみたりもしたけど、結局見つけること出来ていないんだよなぁ。
親代わりだったあいつも──────。
「……私なんかが愚痴ちゃダメね……。嫌いだったマナーとかもちゃんと頑張るようにしよう……」
「あぁ、そうだな」
「?」
僕は首を傾げているパルちゃんの頭を優しく撫でてあげる。
「えへへ」
パルちゃんは嬉しそうに頬をほころばせる。
うーんこの。可愛いな。パルちゃん。うちの子にしてあげたい。
■■■■■
「簡単だったわね」
「そうですねっ!」
街の外れの家に物資を届け終えた僕達は帰路についていた。
そこで温かな料理もいただけて大満足だ。またおつかいクエストでここに来たいくらいだ。
「ここまで来ればこのまま何事もなく終われるわよね!」
……フラグ?
僕はニーナの言葉に首を傾げた。
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