第2話

「さてと」

 

 僕は身分証を発行してくれるお役所から離れる。

 今の僕が持っているのは未成年に配布される仮身分証。16歳を超えれば失効されてしまう仮の身分証ではあるが効力自体は普通の身分証と何も変わらない。

 僕がまず最初に向かうべき場所は決まっている。

 王都に走る大道りを抜け、脇道に入っていく。

 栄えて、活気が溢れていた大道りとはうって変わってボロボロの掘っ立て小屋のようなものが立ち並び、ここに見える人々に活気はなく、ほとんどが痩せ細っている。

 残念ながらよくあるラノベみたいにゴロツキに絡まれることはない。

 まぁこんなスラムに来るような奴は金を持っていないし、持っている奴は大体やばい奴だからいなくて当然なんだけど。


「ここかな?」


 他の掘っ立て小屋のようなオンボロの家とは違う立派な建物の前に立つ。


「たのもー」

 

 僕は一切の躊躇なく立派な建物の玄関の扉を開けて中に入る。

 それと同時に凄まじい速度で僕の方に向かってくる短剣。

 短剣は容赦なく僕の頭を吹き飛ばした。

 おっ?かなり良い威力じゃないか。優秀な子なようだ。


「のきのきと」

 

 僕の頭は何事もなかったかのようにのきのきと再生する。

 まぁこれでもヴァンパイア。再生能力にはそこそこ自信がある。


「は?」

 

 おそらく僕に向かって短剣を投げてきたと思われるショタっ子が平然とした再生した僕を見て呆然としたような表情を見せる。

 まぁ僕もショタっ子やけど。

 中はしっかりとした外見とはうって変わって廃墟のようだった。

 ボロボロの机と椅子が並び、奥にボロボロのカウンターらしきものが見える。

 僕に短剣を投げてきた思われるショタっ子はボロボロのカウンターに腰かけていた。

 

「お前が……例の子か……」


 入り口に一番近い椅子に座っていた大男が立ち上がり、僕の前に立ちふさがる。


「うん。そうだね。ちょっとここに滞在することにするから一応挨拶をしようと思ってね。挨拶はしておいたほうが良いでしょ?」

 

 ここはファウスト王国最大の裏組織である『イグニス』の王都支部。

 別に僕は『イグニス』のメンバーというわけではないが、ちょっとした事情から裏組織から名前を広く知られてしまっているため、挨拶しておいたほうがいいのだ。

 別に僕はあなたの組織を潰すつもりではないですよ?というメッセージを伝えるためにね。


「……あぁ。ありがたい」


「じゃあ僕はもう帰るね?」


「あぁ。ぜひそうしてくれ」


「もう!つれないなぁ。まぁでもこのまま居座っても居心地が悪そうだしさっさと帰ることにするね」

 

 僕はさっさとこの場を去る。

 さて、この後どうしようか?

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