第4話

「おはよう、唐沢くん」

 僕が『ま』の白文字から視線を持ち上げると、そこにはいつものように十字路の交点に立つ彼女。

 後ろには真っ青な空が広がり、笑顔の彼女を引き立てていた。

「今日はいい天気だね」

 その光景を見て、似てる、と思った。

 やっとわかった。どうして僕はそれが直視できないか。 


 彼女の笑顔は、快晴に似ている。


 透き通るように華やかで高い青空のようで、僕の目にはあまりに眩しすぎるんだ。

「ん、どうしたの」

「いやなんでもないよ」

 訝し気な彼女に僕は小さく首を振る。言葉にしなくていい。この気持ちは神様にも気付かれたくなかった。

 どんなに眩しくても、その明るさから目を離したくないなんて。

「おはよう、朝比奈さん」

 誤魔化すように僕は言った。彼女はまた笑う。

 そして僕たちはいつものように道の真ん中を並んで歩く。

 明日の天気はどうだろう、なんて能天気に話しながら。

「晴れたらいいね」

 そう笑った朝比奈さんは。

 次の日、いつもの十字路に現れなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る