電子端末データ《父の手記》【2003.10】-未公開-

2003.3

我々の研究により未来演算機「きぼう」が試運転までこぎつけた。

「きぼう」は先の分からない未知の病気に対する、

これまでにないアプローチ、まさに希望と呼べるだろう。


現在のあらゆる事柄から、

病気がどう進行するかを割り出していくのである。


試運転は、「インクブック症候群」の患者、30名と決まった。


2003.5

試運転を行った。

31名の内6名の患者が、病ではない死因で死亡すると観測された。


何度も観測を行い、精査した結果、

「家庭・境遇」というものをベースに、

「思考の暴走」とも呼べる状況が生まれていると我々は予測した。

この、「思考の暴走」は改変できる。


私にも幼い子供がいる。

自分の子がこの様な結末を迎える事を、

望む親はいないだろう。


私は、彼らの筋書きを書き換える事を決めた。


2003.10

我々はこの病気に対する今後の社会情勢、事件も把握している。


故に、保護患者は私の病院ではなく、

もっとも危険性か低いと判断された「猫柳小児科」の一室を使う事になった。


彼らは、50年眠る事となる。


50年先、「きぼう」が完成すれば、

彼らを効果的にサポート出来る。

そうでなくとも、

特効薬や技術の進歩が必ずあるはずだ。


彼らのハッピーエンドは、人類の進歩にかかっている。

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