【教授の手記】

【1】

今日、我が家に面白い来客があった。

昨今の感染症に対する、まったく新しいアプローチの新薬を開発した少年だ。

そう、少年である。

彼は17歳、高校生だと、確かに調べあたることが出来た。


【2】

つまり、彼は高校生にして「サピエンス」。「賢い」を学名とする種から、

思考を奪うという発想に至ったのである。

粗暴な案である。しかし、故に面白い。

何故、それに至ったか、彼自身がどのような人物か、興味は尽きない。


【3】

妻は相当彼が気に食わないらしい。

「きっと、思考を無くして都合の良い世界にしたいんだわ」

そう言って、先程から機嫌が悪い。

私が彼を気に入っているから、だろうか。

私にはどうしても、彼が世界を救わんとする勇者に見えてしまうのだ。


【4】

彼の素性を調べた。

彼は、いや、あの方は、

人間という種を存続させるために、

人間という種を殺す事を選んだのだ。

私には、彼を否定する事は出来ない。


なぜなら、


【5】

私も知識、そして思考という電気信号の奴隷だからである。

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