【カシューナッツの遺言】
【1】
「…ぼくは、きみを、きみたちを恨んでないんだ。
ぼくは、きみの生き方って文体がね、好きなんだよ。
言わないつもりだったんだけど、
ぼくは、きみに救われた。
きみのおかげでぼくは孤独じゃなかった。
ごめんね、言い逃げなのだけど。
さよなら。親愛なる、ぼくの友人」
そういって、彼の姿は滲んで見えなくなった。
彼は、どこにもいなくなった。
【以下未公開部分】
僕らは生きているわけじゃない。
ヘイゼルに、猫の命を貸してもらっているだけだ。
だから、それを使い切れば消える。
その消失の時が近い。
彼女に命を借りた、すべてのブラウニーが察していることだろう。
だから、せめて、最後に、
彼女にわがままが言いたい。
彼女を前にして、言葉を紡ぐ。
「ぼくの、”友人”」
そういった瞬間、手が溶けた。
言えなかった。誰よりきみのファンだと。
心の底から、きみが好きだと。
愛じゃない。恋じゃない。それでも好きだ。
きみに、せめて、この心が知れることがありませんように。
そう願いながら、
ぼくは最後に一瞬だけ、きみと、目が合った気がした。
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