【貝殻の表紙の日記帳】

【人魚姫】


【1】

■月■■日


私は昔、人魚でした。

今は声と引き換えに人間の姿をしています。


王子様は言いました。


「私は君のことが好きなんだ」と、

愛したのは、歌を歌う私であって、歌声ではないと。


私は、お姫様になりました。



【2】

■月■■日


私は知っています、

王子様が大好きだった音楽を聴かないようにしているのを。


王子様は知っています。

私が一人部屋で何度も声を出そうと喉を震わせているのを。


私たちは今、海底に居ます。

パクパクと空気を求めて口を開けて、水に阻まれて声など出せず。

お互いの姿も曖昧です。


私たちは二人で不幸になりなしたとさ。


【3】

■月■■日


明日は「新薬」を二人で打ちに行きます。


■月■日


情報庁の人に幸せそうだねと言われました!

きっとそうなんだと思います。

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