第25話 英雄の休息
空音が目を覚ましたのは、約二日後の昼だった。
「———はっ!ここどこ!?アクアスは!?」
「……あ!やっと起きた!もう、お医者さんには大丈夫って言われたとはいえ、心配してたんだからね?」
「お医者さん……?ていうかここどこ?」
「ここは、私達のギルドハウスだよ」
「ギルドハウス?何が何だか分かんないんだけど…………あっそうだ!アクアスはどうなったの!?私達、勝ったの?」
「うーんと……。どこまで記憶ある?」
「えっと、確かもう諦めムードになってて……私が琴葉の肩に手を置いて……そこまでだね」
「やっぱりそこなんだ……。結論から言うと、アクアスは倒したよ。空音が私に触れた途端、雷魔法が暴発してね」
「え……な、なんで?」
「それはまだ分からない。でも原因は、空音にある可能性が高いと思う」
「わ、私に……そんな力が……!?」
「あるのかもね。そんなに喜ばしい事じゃないと思うけど」
「何で?かっこいいじゃん!」
「嫌でしょそんな得体の知れない能力。また暴発するかもしれないんだよ?」
「それはロマンあるね!」
「無いわい」
その瞬間、バタン!!という大きな音と共に勢いよくドアが開けられる。
「琴葉さーん!みんな待ってますよ!そろそろお昼ご飯に…………ああっ!!空音さん、目が覚めたんですか!?良かったあー!!」
オビエが空音のベッドに飛び込む。
「うおおっ!?オビエ!無事だったんだ!」
「もう、こっちのセリフですよ!」
「はは、ごめんごめん!」
「あっそうだ!冒険者ギルドに行きましょう!みんなに空音さんが目を覚ましたって教えてあげないと!」
「みんなって?」
「とにかく、早く行きましょう!みんな待ってますから!」
オビエが空音をベッドから引きずり出す。
「だから、みんなってだれ!?」
「ちょっと、オビエー?空音はまだ起きたばっかりなんだから、あんまり無理させないでよー?」
「はーい!!」
オビエはそう言って空音を思いっきり引っ張って走る。
「ちょっと、速い速い!速いってばー!!」
まあ、大丈夫そうか。
———そして、冒険者ギルドにて。
「みなさん、空音さんが目を覚ましましたよ!」
その瞬間、おおおー!!と歓声が上がる。
そう、魔王軍幹部アクアスを討伐した私達は、英雄扱いされていたのだ。
街中からのVIP待遇に、私は未だ落ち着かないのだが…………
「みんなでお祝いでーす!カンパーイ!」
「「「「「カンパーイ!!!」」」」」
出会った頃の初々しさはどこへ消えたのか、オビエはすっかり乗り気の様だ。
「うおお……!私達、すごい人気者だね!」
「うん……正直ちょっと恥ずいんだけど」
「ふふふ。人見知り発動してないで、異世界ライフを楽しもうよ!今までいた世界じゃこんな英雄扱いされる事なんてなかったんだし!」
「……まあ、そりゃそうだけど」
「みなさーん!英雄の空音さんが通りますよー!」
「よーし、みんなー!英雄の復活を祝って、空音さんを胴上げだー!!」
「「「「「わーっしょい!わーっしょい!」」」」」
空音が冒険者のみんなに担ぎ上げられる。
「……ぷっ、あははは!!何やってるの!」
「ほらほら、琴葉も来て!」
「えー?……よし、えーい!!」
「わあー!えへへ、楽しいね!」
「ちょっとー!ぼくだけのけ者にしないでくださいよー!」
「うおおっ!!お、お三方……流石に三人はきついです……!」
「もうちょっとだけ!ね!」
「は、はい……」
そして空音は、私にだけ聞こえるように。
「この世界に来て……良かったよね?」
「……!うん……!」
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