Day 5.カオリの窮状~所詮クズ男はそんなもん~
男としての余命宣告(?)を受けてから5日目の19時、パチ公前。
「直人! こっちこっち!!」
変わり果てた僕が分からずキョロキョロしてるであろう直人をみとめて呼び止めた。
「お、カオルか?! 随分変わったじゃん! こりゃ呼ばれなきゃ分からねーわ!」
心なしかいつも以上に下品な笑い方をする直人。なんだかちょっと居心地の悪さを感じるが、多分気のせいだろう。
むにゅっ。
「いい胸してんじゃん?」
いきなり胸を揉んでくる直人に、
「ちょっ、やめろよ!!」
冗談半分で返すと、直人も
「わりぃ、あまりにもいい胸してるもんだからつい、な。」
直ぐに手を引っ込めて冗談だよ、と笑った。
「とりあえず軽く飲み行こうぜ!」
僕は頷くと、直人に誘われるがままに雰囲気のいいBARへと入っていった。
シックで落ち着いた空間がそこには広がっていて、程よく客のいる店内のカウンターに陣取り、元に戻る方法について話し合う。
冗談だと笑いながらやたらボディタッチしてくる直人に苦笑する僕。
ああでもない、こうでもない、と言い合う間、やたら強い酒を何杯も勧められて、かなり酔いが回ってきた。
そんな時、
「ちょっと風、あたりに行かね?」
直人のその言葉に、酔った僕のことを気遣ってくれたのだと信じて疑わなかった。
あとから考えれば強い酒を連続で勧められた時点で気づくべきだったのだけど。
いや、そもそももっと警戒すべきだったのだ。遥の言う通り、直人は女に対して最悪の男だと。たとえそれが元男だったとしても――。
外に出ると直人は少しずつ人気のない所に移動していく。
少しふらつきながら着いていく僕を見かねて、肩を貸してくれたのはいいが、腕が腰に回っている。
しかも微妙に尻を触っているような気もするが、酔っていて正常な判断ができていない僕はあまり気にならなかった。
ひとしきり歩いて繁華街近くを流れる川の河川敷に着いた。明かりも少なく人気もない。
「よし、この辺でいいか。」
突然直人は立ち止まると、街道から死角になる場所に僕を下ろして隣に座った。
そして突然。
?!
いきなり舌を絡めるキスをされて動揺する僕。酔いはさめて頭はハッキリしているのに体が言うことを聞かない。
何とか引き剥がして逃げようとするも、あっさり捕まる。
「何、する気?!」
ようやく絞り出したその一言に、下卑た笑いを浮かべて直人が答える。
「お前可愛いじゃん? ホントかどうかも知らんが男だった時よりずっといいぜ! そのまま女でいろよ。カオリちゃんの初めて、貰っちゃおう♪」
ようやく自分の置かれた状況を理解して青ざめる僕。
走って逃げたいが、如何せん体の酔いがさめない。
くそっ!!
何も出来ずに直人の思うままになるのかと思うと怖くて、悔しくて、涙が出る。
もうダメだ!!
そう思ったその時。
直人の体が真横に吹っ飛んだ。
??!!
僕は何が起こったのか分からず目を白黒させる。
「誰だっ!!」
辛うじて受身を取ったらしい直人が、誰何の声を上げる。その声は怒りに満ち満ちていた、けれど。
「カオリに手を出すな!!」
それ以上の怒りに震える声の主が、そこに立っていた。
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