Day 4.聡と遥の心配~それぞれの想い~
――カオリのやつ、大丈夫だろうか?
昨日行った神社で、急に様子がおかしくなったカオリ。何があったか分からないだけに心配しているのだが。あの後何も音沙汰がない。
――1人になりたい
昨日最後にカオリが放った一言。何もなかったわけがない。けれど、その言葉に従うなら、あいつが独りで答えを出すのを待つしかないのだろう。
ふと、カオリの胸を思い出してしまい、己の煩悩に嫌気がさす。
カオリの笑顔や喜怒哀楽の表情。潤んだ唇。
危うく暴走しそうな本能に自己嫌悪を覚えながら、
「俺はっ!!
誰にともなく言い聞かせるように小さく叫んだ。
くそっ!
短く吐き捨て。
俺は!!あいつが元に戻る為に全力を尽くす!!そう決めたんだ!!
固い決意を込めて誓う。どんなにカオリが可愛くとも。俺はその意志を貫いてみせる、と。
◇◇◇◇
――カオリ、大丈夫かな?
1人になりたい――
そう言ってカオリが神社から去ったのが昨日。その後連絡もない。
正直、心配で堪らない。
「なんでこんなに不安になるんだろう?」
カオリが元に戻らなくなったら、って思うからかなあ?
カオリが元に戻らなかったら困る理由を考えてみた。
「カオルの事よろしく、っておじさんとおばさんに頼まれてるのに……!! このままじゃ合わせる顔がないじゃない!! それに……。」
それに?
今までカオルと過ごした思い出が次々と蘇る。何だか懐かしくて、甘酸っぱい気持ちに……は多分なってないけど。
こんなに胸が痛むのはなんでだろう。
さっきから何度もタップしかけてやめる通話ボタンを――
えいっ!!
思い切って押してみた。
プルル、プルル――
プルル、プルル――
なかなか出ない。
そろそろ切ろうかな?
そう思ったその時。
『遥?どうした?』
「えっ、あっ、カオリ? ……えっと……大丈夫??」
突然繋がった電話に戸惑いながら、恐る恐る聞いた。
『うん、何とか落ち着いた。』
その答えに心底ホッとした。けれど――
『さっきさ、直人から連絡あってさ。久しぶりに会ってくる。』
「えっ?!」
『あいつも女癖は最悪だけど、良い奴なんだよ。一緒に元に戻る方法考えてくれるって。』
脳裏によぎる嫌な予感。さっきカオリも言ったが、
「ちょっと、それやめた方がいいって!! アンタ今自分の状況わかってんの?!」
『大丈夫だってー! あいつ俺が男だってわかってるしさ。』
……ダメだ、全く危機感の欠片もない。こうなったら!!
「カオリ、明日いつどこで直人に会うの?」
『えっ? 19時にパチ公前だけど…。』
「そう、分かった。くれぐれも気をつけてよ??」
『だーいじょうぶだってー!! 遥は心配性だなあ。』
「はいはい、じゃあまた今度ね!」
『うん、またね。』
プツッ、ツーッツーッ。
とりあえず、急いで対策を打たないと、カオリが危ないかもしれない。
私は取れるだけの手を打つべく、動き出した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます