彼女、道に落ちてないかなぁ? いいえ、落ちてません。

妹ようかん

第1話 屋上

「あぁぁぁ〜 彼女、道に落ちてないかなぁ」






 高校に入学してから2ヶ月経った頃、俺、わたり優希ゆうきは学校の屋上で、放課後、友人の立花たちばな 陽介ようすけと二人で話していた。






『はっ?何言ってんだお前・・・彼女は道に落ちてねえぞ。落ちているのは良くて小銭だぞ」





 陽介はあきれた表情で俺に言っているが、俺もそんなことあるわけないとわかっている。ある方がおかしい。





「陽介、そんなことを本気で考えている奴は、絶対いないともちろん俺も思ってるぞ 」






 女の子は道に落ちているものではない。拾うものでもない。そんな事は幼稚園の時からわかっている。そう担任の若菜わかな先生に教えられた。道に落ちている人など普通はいない。誰にも自分の居場所っていうものはあるはずだ。決して道ではない。



 この前、道で座っている女子高生を会社員が拾って、世話をして、その女子高生を更生させていく、っていうアニメを見て、「いい話だ」と少し感動してしまったが、そんなこと現実ではあり得ない、あり得るわけがない。






『そうだぞ、優希、彼女は道で拾うものじゃなくて、自分が相手に告白するか、相手に直接告白されるかだぞ』





 得意げにそう言う陽介は彼女がいる。彼女は他校にいるらしく、一緒に放課後帰宅というのは難しいらしい。聞くところによると彼女は可愛いらしい。しかも相手に告白されて付き合っているらしく、もちろん道で拾ってはないらしい。少し羨ましい。





「自分から動いて彼女を作るより、相手から告白されて付き合うのに憧れるよな。そっちの方が長続きしそうじゃないか。今まで付き合ったことないが。

 実は、自分は『彼女欲しい』と言っておきながら、草食系なんだ」






『草食系男子だから、告白しないってずっと言ってると彼女できねえぞ。草食系男子なのに彼女がいるヤツはみんなイケメンか女子に優しいヤツらだぞ』






 あいにく、俺はそこまでイケメンでも優しくもない。どこにでもいそうな普通の顔で、人に頼まれたら、頼まれたことをするだけで、頼まれなければ何もやらない普通の人間である。



 自分で言ってて少し悲しくなってきたな。確かにこんなヤツを彼氏にするよりイケメンで優しいヤツを彼氏にした方が女子も幸せだと思う。このままじゃ彼女はできないだろうな。顔を整形するのはさすがに高校生には出来ないし、したくない。今日から優しくなろうか。やっぱり明日からにしよう。そう心に決めていると、






「キーン コーン カーン コーン キーン コーン カーン コーン」




 


 最終下校時間30分前のチャイムがなった。部活をしていた奴らが用具の片付けを始めているのが見える。中学ではバスケ部だったけど、片付けめんどかったな。部員全員のビブス持って帰って洗わすとかなんなんだよ。意味わかんねえ。





『チャイムも鳴ったところだし、帰るか』



 陽介は立ち上がり、鞄を持って下へと続く階段があるドアに向かって歩いていく。





「そうだな。帰るか」



 俺も陽介につづき、鞄を持ってドアに向かっていった。




 彼女をつくることはひとまず考えるのはやめよう。急ぐことではない。まだ高校生活は始まったばっかだ。今は明日までにやらなければならず、忘れたら公開処刑されてしまう数学教師に出された宿題のことを考えよう。

 


 そんなことや今日の晩ご飯は何んなのか、思い出せもしない昨日なら晩ご飯などを考えながら陽介と校門を出て、駅まで一緒に帰宅した。





『じゃあ、優希、また明日な』




「おう。またな」


 



 陽介と駅で別れた後、『今日は水曜だし、コンビニで立ち読みしようか』と考えながら一人、だんだんと家に近づく、高校にいる間は毎日通る道を歩いていた。









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