ルール説明

「雪合戦ですか……?」


「こうして丸めた玉を投げて相手に当てる遊びですよ。といっても普通にやっても面白みがないですね。アオバが本調子でないことやユキ達も参加させることを考えると……三対一がちょうどいいですかね?」


 ルールは至ってシンプル。

 雪玉を作って、投げて、相手に当てる。ただそれだけだ。


 しかし、ごく普通に遊んでも自分が有利だと判断した心美はやや挑発的に笑う。

 雪合戦を勝ち負けの発生する勝負として考えたとき、心美が重きを置くのは得点よりも被弾しないことを思い描いた。

 つまり、投げられた玉に当たらないこと。


 被弾しないことに関しては心美はそれなりに強いと自負している。

 心を読む瞳は投げるタイミングや狙われる場所など、避けるのに必要な情報を得ることができるかもしれない。

 テレポートに関しても千里眼と併用しなくても、目の届く先への転移単体としても回避には十分しようが可能だ。


 初めはユキとスカーをそれぞれパートナーに選んだタッグ戦を想定していたが、己の優位性とただでさえ本調子を出せないアオバでは五分の勝負にはならないだろうと想定した心美は、このようにして少しばかりハンデを背負うように立ち回ることを決めたのだった。


「じゃあボクはユキちゃんとスカーちゃんの力を借りられるってことなんだね。数の優位もあるしそれなら行けそうな気がするかも……」


(みんな参加するんだったら当たった数はどうやって数えるのー? 適当ー?)


「まあ、勝負とは言えお遊びの範囲なので自己申告でもいいと思いますが、心配なら終わった後に全員の心を読んでみれば分かる話です。嘘をついて誤魔化そうとしても私の目は欺けないですし、あなたたちの心はすべてを覚えていることですからね」


 アオバは与えられた味方の力があれば一矢報いることもできるのではないかと少しやる気を出す。

 ユキはどのようにして勝ち負けを決定するのかを疑問に思うが、全員参加で審判的な存在がいないということでその心配も仕方のないことだろう。


 しかし、心美には見通す瞳が存在する。

 意図的に嘘をついて雪玉を当てられてしまった数を誤魔化そうとされても、嘘を見抜く瞳がそれを暴く。

 もしくは当てられた数を覚えていないとなった場合でも、少し記憶を遡ってやればすべてを明らかにすることができる。


(え……まだやるって言っていないのに……)


 一匹、影に佇んでいた黒猫は何も言っていないのに参加が決まっていることを嘆きながら、観念したように出てくるのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る