第8話

知り合いがお店を畳むという。実家を片付けたので荷物を運び、そこを拠点にするらしい。


最後のマーケットは三日間。2日目はあいにくの雨で着いた時にはみんなでお茶を飲んでいた。今日は開店休業らしい。懐かしい知人が居たがもうすぐに帰るらしい。しばらく話して帰っていった。


残ったメンバーでごはんに行き、また店に戻る。結構な雨だしお客さんも来ないので今日はもう店を閉めるという。落ち着いて周りを見渡すと、以前まであった大量の石たちは先に引っ越ししたようで、残された石たちが店全体にこじんまりと置かれていた。少し薄暗い土間の棚に石たちが鎮座している。我が家に来る子はいないかな?とゆっくりと石たちと対話する。あまり沢山あると落ち着かず、隙間があるくらいが丁度いいのだ。一つ一つ気になった子から手に取り、めでながら『うちの子になるかい?』と聞いていく。


2センチほどのプラのケースに入った石が目に入る。中には深い青色の富士山のような形をした小さな石が一つ入っており、周りには細かな水晶が数個入っていた。

『この石は何ですか?』

と聞くと

『何だっけな〜?』

と調べ始めてくれた。

“カバンサイト”という石だという。

開けてみていい?と聞いてケースを開けてみたら何だかわからない力強い-“何か”が広がったのだ。目を見開いて見ていたら周りの人も

『開けたらすごいパワーだね!だからケースに入れてあるんだね!』と、そこにいる人3人とも“何か”を感じたらしい。石にそんなパワーがあるなんて知らなかった。面白い経験をした。


他にも卵ほどの大きさに天の川みたいな波紋ができているガーデンクウォーツと、いろんな色の混ざった少し形の変わった小さなクォーツを我が家に迎えることにした。家に帰ったら浄化してあげてね♪と言われ、ホワイトセージも少しもらって帰った。


帰宅し子どもたちが寝静まったあと、浄化のためホワイトセージに火を灯す。LEDの明りに石たちが反射する。上がってきた煙に石を近づける。スッと煙が近づいてきたら浄化完了の合図だ。迎え入れた石たちはとくに変わる事なくその日は玄関に置いて寝た。


翌日玄関の新しい家族を覗くとびっくりするくらい綺麗に輝いていた。

“あ、馴染んだ。”

これが馴染むというやつなのか。そう実感とともに、もう少し“元気”にできないか?と考えた。今度は綺麗な水で浄化しようと思ったのだ。山間の川の水で浄化をする。浄化と言っても水に入れておくだけだ。雨降る中、石たちを浄化し、ハンカチで拭くとまた元気になっている。

『石はあまり構いすぎるとダメだよ。もともと自然のものだからね』

と教えてもらい、帰宅する。


今も玄関に鎮座している石たち。時々子どもたちにいじられ、移動していることもあるが、段々と自分の場所として日常に溶け込むだろう。出会いも別れも気がつけば日常に溶け込む。そんな日常を生きているのだ。

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